サマリー
世界経済は好調を持続する中で2017年を終えようとしている。新年はどうであろうか。中国の減速、ユーロ圏の高成長持続は比較的堅いようにみえる。焦点はやはり、景気拡大が100カ月を超え、戦後最長に近づく米国景気の持続性であろう。米国景気が屈折点を迎えるとすれば、そのパターンは大まかに二つ考えられる。一つは労働市場の一段のひっ迫から賃金上昇率停滞・低インフレが変調を来し、金融引き締めの強度が増すパターン。もう一つは景気拡大と低インフレとの併存が長期化し、緩和的な金融環境が継続する中で資産バブルが発生・膨張し、その反動が生じるパターンである。こうした観点から、成立までカウントダウンの段階に入った米国の税制改革を評価すれば、以下のようにまとめられよう。所得税の最高税率や法人税率の引き下げが景気を刺激するのであれば、既にマチュアになっている米国景気の拡大余地が早期に喰い尽くされ、2018年中にも前者のパターンによる景気減速・後退の可能性が高くなる。一方、これら減税措置の効果が主として家計貯蓄の増加、企業による自社株買いの活発化などに留まるのであれば、2018年中に米国景気の拡大が途絶える可能性は低下する。一方で、格差拡大を伴う資産価格の上昇の継続により、後者のパターンによる景気失速のリスクが蓄積され続けることになろう。2018年中にそのリスクが顕在化する可能性は低いとみたいが、いずれにせよ、米国の税制改革は世界経済の不確実性を高める政策というべきであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2018年の中国経済見通し 6.3%程度に減速へ
「一強」への行きすぎた忠誠はリスク要因に
2017年12月19日
-
2018年の米国経済見通し
税制改革の実現で経済政策の議論は一巡か
2017年12月19日
-
2018年の欧州経済見通し
景気好調が続くユーロ圏、Brexit懸念が晴れず低成長継続の英国
2017年12月19日
-
2018年の日本経済見通し
成長の牽引役は「外需から内需」、そして「量より質」へ
2017年12月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日