サマリー
◆2016年11月の非農業部門雇用者数は前月差+17.8万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+18.0万人)をわずかに下回ったものの、概ね想定通りの結果であった。非農業部門雇用者数増減の3ヵ月移動平均は同+17.6万人と前月(同+17.5万人)からほぼ変わらず、緩やかなペースでの雇用者数の増加が続いていることが確認された。
◆11月の失業率は4.6%となり、横ばいを見込んでいた市場予想に反して、前月差▲0.3%ptと大幅に低下した。これは2007年8月以来の低水準である。ただし、労働参加率は同▲0.1%と2ヵ月連続で低下しており、失業率の大幅な低下についてはやや割り引いて見る必要があろう。
◆11月の民間部門の平均時給は前月から3セント減少、前月比▲0.1%と、2015年12月以来の減少に転じた。市場予想(同+0.2%)を下回る結果となり、平均時給の前年比変化率も+2.5%と、高い伸びを示した前月(同+2.8%)から一転して伸びが縮小した。
◆今回の雇用統計を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)は12月13日~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、追加利上げに踏み切る可能性が非常に高い。失業率が低下する中での賃金上昇率の鈍化はややバランスの悪い結果と言えるが、失業率の大幅な低下は将来の賃金上昇圧力となるため、利上げを正当化する要因となるだろう。なにより、雇用統計発表後も市場は12月利上げを十分織り込んでおり、利上げを行いやすい環境にある。
◆労働市場の先行きについては、引き続き緩やかな改善基調が続くと見込む。ただし、完全雇用が近づき、企業が求める人材と労働者との間でのスキルのミスマッチが顕在化する中で、雇用者数の伸びは鈍化していく公算が大きい。今後の焦点としては、労働参加率の上昇が労働供給不足をいかに補うかということになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日