サマリー
◆10月の非農業雇用者数は前月差17.1万人増となり、市場予想を上回った。一桁台の増加が続いた春ごろに比べると、7月以降、着実に雇用者数は拡大している。しかし、2011年に比べて2012年の増加ペースが加速しているわけではなく、労働市場に過熱感はみられない。むしろ、賃金上昇率は過去最低の伸びにとどまっている。このように、米国の雇用環境は質的な改善を欠いた状態が続いており、消費者には回復感が乏しいままといえよう。
◆一方、9月に大きく低下した失業率は7.9%と前月から0.1%ポイント上昇し、3ヶ月ぶりに悪化した。就業者の増加幅は前月から半減し失業者も3ヶ月ぶりに増加しているが、中身をみると、職探しを始めた非労働力人口からのシフトや、より良い条件を見つけようとする自発的離職者の増加などが失業率を押し上げている面もある。従って、労働市場の流動性が高まっているとポジティブに解釈したい。
◆9月に続いて10月の雇用統計も予想を上回る内容だったために、11月6日に投票日を迎える大統領選挙では、共和党のロムニー候補よりは現職のオバマ大統領に追い風となるだろう。ただ、直前に発表された統計がもたらすインパクトは限定的。オバマ陣営はアピールに余念がないが、ねじれ議会で膠着したなか、果たしてオバマ政権は何かしたのだろうか。足もとの改善は民間部門の自律的な回復によるものであり、むしろ「財政の崖」など先行き不透明な要因を放置してきたために、民間企業の投資活動や採用活動を抑制している側面さえあろう。
◆10月末にかけてハリケーン「サンディ」が東海岸を直撃し、多大な被害をもたらした。被災地域は人口密集地であり、製造業だけでなく、サービスや観光業など広範な業種に影響が及ぶだろう。なお、今回の雇用統計の結果は「サンディ」の影響をほとんど受けていないとみられるが、復旧・復興の長期化に伴って様々な影響が11月以降の雇用統計に反映されるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日