米経済見通し 変調を示唆する・示唆しない材料
外部の不安定さは、依然として“今年は違う”というシナリオのリスク要因
2012年04月19日
サマリー
◆2012年に入ってから、家計や企業の活動は総じて堅調に推移しており、両者の動きを反映する雇用環境は順調に拡大してきた。市場コンセンサスに続いて、これまで慎重な見通しを維持していたIMFなどの国際機関も、緩やかな回復が続くという大枠を変えずに2012~13年の見通しを上方修正へ。欧州の債務問題が小康状態になり、米国の自律的な回復がみられることが背景にあるようだ。但し、欧州問題は下ブレリスクとして意識され続けており、原油・ガソリン価格の高止まりの影響も不透明のまま。それでも去年よりも今年、今年よりも来年がよくなるという基本的なスタンスは各機関に共通している。ブッシュ減税の終了や強制歳出カットの開始といった国内の公的セクターによる下押し圧力は顕在化しないことが前提だろうが。◆一方、4月に入ってから発表される経済指標に市場予想を下回るケースが増えている。暖冬などの特殊要因が解釈を難しくしている面はあろうが、従来の勢いがややトーンダウンしているのは事実。3月の雇用統計に始まって、製造業の生産は一服し設備投資の増加ペースも鈍く、住宅着工は2ヶ月連続で減少した。いずれも昨年後半からのトレンドが変わったと判断するのは早計だろうが、今後の展開を注視する必要がある。対照的に、小売売上など個人消費は引き続き堅調であるが、雇用・所得環境の改善が継続しなければいずれ勢いを失ってしまう。現時点では、様々な材料が混在し、お互いに矛盾する現象も生じている。本来、楽観派と悲観派の見通しの収斂は予測の確度が高まっていることの表れのはずだが、むしろ自信のなさ故に“みんなで渡れば怖くない”的な状態に陥っているのかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月22日
金融商品の評価
金融商品の価値はどのように算定するのか?
-
2021年01月22日
2020年12月全国消費者物価
コアCPI変化率は約10年ぶりに▲1%台まで下落幅が拡大
-
2021年01月22日
家計の住宅ローンを点検する
近年の動向とコロナショックによる現時点での影響
-
2021年01月21日
2020年12月貿易統計
欧米での経済活動制限による需要減少を受け、輸出は足踏み
-
2021年01月21日
社外取締役に期待される役割の開示~改正会社法施行規則
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く