サマリー
◆食料やエネルギーを中心に値上げが相次いでいる。物価高による2022年度の家計負担増加額を年収十分位階級別に試算すると、所得水準が最も低い世帯で3.8万円、最も高い世帯で9.3万円である。7月10日投開票の参議院選挙では物価高対策が争点の一つとなっており、一部政党は消費減税や一律の現金給付を公約に掲げている。だが、こうした政策はいずれも高所得世帯ほど恩恵が大きく、負担の軽減が過大になりやすい。
◆岸田文雄政権は6月7日に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(実行計画)を閣議決定した。重点投資分野の1つである「人」の分野では、賃上げを政策的に推進する考えが示された。だが労働分配率は既に高水準にあり、分配面からの賃上げ余地は乏しい。人的資本投資の拡大は生産性向上に資するとみられるが不確実性は大きい。政策効果を適宜検証しつつ、必要に応じて支援の規模や内容を見直すべきである。成長分野への円滑な労働移動には、雇用の安定を社会全体で図る取り組みも必要だ。
◆成長と分配の好循環の成否は、実行計画の重点投資分野に記載された各種計画等が民間資金を呼び込めるかに左右されるだろう。他方、実行計画には成果目標がなく、岸田政権の目指すべき経済成長率や所得水準なども数字で示されていない。政府の結果責任が曖昧になり、改革のペースが加速しない恐れがある。そのため計画の「実行」だけでなく「成果」も重視した政策運営が期待される。新しい資本主義を貫く基本的な思想として「課題解決を通じて国民の持続的な幸福を実現すること」が謳われているが、将来世代を含めた持続的な幸福の実現には社会保障と財政の持続性確保が課題だ。
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