2019年02月21日
サマリー
- 引き続き内需依存。潜在成長率を下回る低空飛行が続く:2018年10-12月期GDP一次速報の発表を受けて経済見通しを改訂した(2018年度+0.5%、2019年度+0.8%、2020年度+0.6%)が、日本経済は踊り場局面にあるという当社従来の判断に変化はない。先行きの日本経済は、在庫循環および外需寄与が剥落する中、低空飛行を続ける公算が大きい。外需が振るわない中、内需の重要性が相対的に増してくるが、内需の先行きには好悪の両材料が存在している。好材料は、原油価格の下落だ。他方、悪材料は2019年10月に予定されている消費増税である。しかし後者については増税額を上回る規模での歳出拡大が予定されている。2019年の日本経済は、2018年以上に内需依存の色彩を強めるだろう。本予測では以下の三つの論点を検証した。
- 論点①:外国人労働者受け入れの賃金・生産性への影響:2019年4月から施行予定の改正入管法は、就労を目的とする在留資格(特定技能1号、2号)が創設され、今後5年間で最大35万人程度の受け入れが見込まれている。ただ現状では、外国人労働者は都市圏や製造業が盛んな地域に集中する傾向が強い。外国人労働者の受け入れの影響を計量的に分析すると、外国人労働者比率が1%pt上昇すれば、賃金は男性で0.6%程度とプラスになる一方、女性では影響は見られなかった。さらに外国人労働者が10万人増加すれば、製造業の労働生産性は0.25%上昇するとの試算結果が得られた。中長期的には、外国人労働者の受け入れにより日本人労働者の就業条件は向上する可能性が高いが、併せて経済・社会の変化に対応できるよう、日本の労働者に対する職業訓練や外国人労働者の社会統合政策なども必要だ。
- 論点②:グローバル経済のメインシナリオ:2016年終盤から始まった「グレートローテーション」、つまり株高・債券安は、2018年半ばまで継続したものの、足下では方向感が定まらない局面に陥っている。グレートローテーションは、景気が下降し、株式市場が調整局面に入ると終了する。従って、今後の焦点の一つは、世界経済の動向であり、そのカギを握っているのが、世界経済のトップ2の米国と中国である。世界生産に先行する中国の景気先行指数が足下で持ち直しており、日本から中国向けの工作機械受注にも下げ止まりの兆しが見られる。中国政府・中央銀行による経済対策・金融緩和がこうした流れを後押しするだろう。また、米国企業の景況感を表すISM指数は2018年末に大幅に悪化したものの翌月は改善しており、高水準を維持している。もっとも、トランプ大統領の政策運営は内外の景気を見通す上での波乱要因であり、引き続き注視していく必要があろう。
- 論点③:グローバル経済のリスク要因:リーマン・ショック後、長期にわたって維持された低金利は高水準の債務(高レバレッジ)を可能にしてきたが、その結果、例えば米国企業の債務残高GDP比は過去のバブル崩壊前後の水準を既に上回っている。何らかの出来事をきっかけに信用収縮が起こり、クレジットサイクルが逆回転を始める可能性は否定できない。2019年以降、①トランプ政権の迷走、②中国経済や③欧州経済の悪化、④残業規制の強化、⑤株価下落による個人消費の悪化など内外の様々な下振れリスクが顕在化した場合、日本の実質GDPは最大で▲3.6%程度減少する可能性がある。今後も、世界経済が下振れするリスクには細心の注意が必要であると言えよう。
- 日銀の政策:日銀は、現在の金融政策を当面維持する見通しである。現在の金融政策の枠組みの下、デフレとの長期戦を見据えて、インフレ目標の柔軟化などが課題となろう。
【主な前提条件】
(1)公共投資は18年度▲1.6%、19年度+4.1%、20年度+1.3%と想定。
(2)為替レートは18年度110.6円/㌦、19年度109.0円/㌦、20年度109.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は18年+2.8%、19年+2.6%、20年+1.9%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2026年7月号(No.476)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年06月24日
-
地政学的緊張が促すAI開発競争
2026年06月24日
-
日本経済見通し:2026年6月
覚書後の中東情勢の影響とAI需要の下支え/消費減税と所得連動給付
2026年06月23日
最新のレポート・コラム
-
資金循環統計からみる家計金融資産の現状
2026年3月末の金融資産は2,386兆円に。現預金比率は47%に低下
2026年06月26日
-
日本での実質株主確認制度導入に向けた議論
会社法中間試案では2つの制度の導入を検討
2026年06月26日
-
米国:AI活用は続くが、「選別」も本格化へ
「選別」は過剰投資を抑制も、信用リスク・資産価格への波及に注意
2026年06月25日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 高市政権の成長戦略、骨太の方針で実質賃金は本当に増加するのか?
①時間あたり労働生産性の引き上げ、②1人あたり労働時間の増加、の2点が1人あたり実質賃金の増加に向けたカギ
2026年06月25日
-
「形式的・機械的な議決権行使」批判について考える
2026年06月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
-
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
-
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

