第174回日本経済予測

デフレの原因と政府・日銀に求められる政策対応を探る

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2012年08月16日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 増川 智咲
  • 齋藤 勉
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎

サマリー

(1)経済見通しを改訂:2012年4-6月期GDP一次速報を受け、2012-13年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+2.2%(前回:同+2.4%)、2013年度が同+1.4%(同:同+1.3%)である。足下の日本経済の拡大ペースは当社の従来の想定を僅かながら下回っており、日本経済には下振れリスクが強まっている。

(2)デフレの原因と政府・日銀に求められる政策対応:本予測では、わが国でデフレが継続している原因を検証した上で、政府・日銀に求められる政策対応について考察した。日本銀行の楽観的な物価見通しに反して、わが国では当面デフレ傾向が継続する見通しである。当社がコアCPIの要因分解を行ったところ、GDPギャップの縮小とインフレ予想の改善が物価押し上げ要因となる一方で、雇用者報酬の低迷と企業物価の伸びが鈍化傾向にあることが物価抑制要因となっている。今後は売上高の増加や、非製造業の低労働生産性(資本装備率が低いことなどに起因)の向上などを通じて、雇用者報酬を引き上げる政策が必要となる。具体的には、政策当局は、日本経済再生に向けて、[1]トップリーダーの確固たる「ビジョン(国家観・哲学)」に基づいた体系性のある政策を実行、[2]「内需」や「需要サイド」のみに固執するのではなく、「外需」や「供給サイド」も重視したバランスのとれた経済政策を実施、[3]消費税引き上げ、社会保障費を中心とする歳出削減などを通じて「財政再建」を実現、[4]政府・日銀がより一層緊密に連携、という4点を柱に据えた経済政策を断行すべきである。特に、上記[4]に関連して、当社は、グレンジャー因果性を用いた分析などによれば、日銀の更なる金融緩和を通じた円安・株高の進行などがデフレ脱却に有効であると考えている。

(3)日本の輸出競争力を検証する:本予測では、ドイツや韓国との比較などを通じて、日本企業の輸出競争力を検証した。本邦企業の輸出競争力は、電機セクターを中心に大幅に低下している。わが国の政策当局は、[1]日銀が更なる金融緩和を行って円高に歯止めをかける、[2]日本経済の円高耐久力を高める、[3]円高を逆手にとった積極策、という「円高に対する3つの防波堤」をバランスよく整備すべきである。さらに、日本企業は、ドイツからは「ブランド力」の構築、韓国からは「マーケティング力」の強化などを真摯に学ぶ必要があるだろう。

(4)日本経済のメインシナリオ:今後の日本経済は、様々な景気下振れリスクを抱えつつも、メインシナリオとして、[1]震災発生に伴う「復興需要」、[2]米国・中国経済の持ち直し、[3]日銀の追加金融緩和、という「三本の矢」に支えられて、緩やかな景気拡大が続く公算である。

(5)日本経済のリスク要因:日本経済が抱えるリスク要因としては、[1]「欧州ソブリン危機」が深刻化、[2]地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、[3]円高の進行、[4]将来的な経常収支赤字化、の4点に留意が必要である。[1]に関連して、2002年の変動相場制への移行を受け、経済が劇的な復活を遂げたアルゼンチンと、ギリシャの現状は大きく異なっている。欧州諸国への輸出依存度の高さなどを勘案すると、仮にギリシャがユーロから離脱した場合、ギリシャ経済は壊滅的な打撃を受ける公算である。結論として、ギリシャのユーロ離脱は3~4割程度、ユーロ圏が本格的な金融危機に見舞われるのは1~2割程度の蓋然性と見られる。

(6)日本銀行の金融政策:日本銀行は少なくとも2014年度いっぱい、政策金利を据え置く見通しである。景気下振れ懸念が強まる局面では、更なる金融緩和策発動の可能性が生じよう。

【主な前提条件】
(1)公共投資は12年度+6.7%、13年度▲0.9%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは12年度79.3円/ドル、13年度79.0円/ドルとした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は12年+2.2%、13年+2.1%とした。

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