出産・育児に起因する男女の所得格差の是正

家族政策だけではChild Penaltyは解決しない?

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2025年01月31日

サマリー

◆先進国において男女の所得格差の大部分は出産・育児で説明できる。このようなChild Penalty(以下、CP)の代表的な是正策として、母親の労働意欲に直接影響を与える家族政策(Family-Friendly Policy:以下、FFP)が挙げられる。

◆FFPは主に、①時間関連(フレックスタイム制度や育児休業制度など)、②サービス関連(保育所・幼稚園など)、③財政関連(育児手当や補助金など)の3つに分類される。各政策が単独ではなく同じ目標に向かって連携するように、①、②、③の政策をバランスよく包括的に行うことが重要とされる。

◆日本のFFPは制度面だけを見ると諸外国と比較しても先進的な点は多い。しかし、実態として利用されていない制度も多く、FFPの拡充だけでは不十分であることを指摘する研究もある。なぜならば、FFPでは対処できないジェンダー規範や労働市場の構造などがCPに大きく影響するからだ。

◆日本のCPの是正のためには従来のFFP拡充に加えて、働き方改革、労働市場の構造改革、男性の意識・行動改革などの多面的なアプローチが必要だと考えられる。特に、FFPに実効性を持たせるようなインセンティブ設計は重要だろう。日本で男女の所得格差を是正するには、子育てにかかる金銭的・時間的なコストを社会全体のものと認識し、母親のみならず、男性や企業なども子育てコストを負担する必要がある。

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