サマリー
◆2023年度の最低賃金の目安は、政府が目指してきた1,000円を超えた。今後は新たな政府目標に関する議論が本格化するだろう。そこで本稿では、新たな最低賃金目標に関する議論の材料を提供するため、欧州などの事例や最低賃金の国際比較、シナリオ別の最低賃金見通しの試算などを通じて課題やポイントを整理する。
◆新たな最低賃金目標を検討する上で参考になるのが欧州だ。英国では2024年までに最低賃金を賃金中央値の3分の2まで引き上げる目標を掲げている。EU加盟国が2024年中にも適用を開始する新たな目標では、加盟国が最低賃金の水準を評価するための参照値として、賃金中央値の60%あるいは平均賃金の50%を挙げている。「最低賃金1,000円」など目標を絶対額で示す場合に比べて分かりにくいものの、欧州型目標は労使間合意が容易で経済実態が反映されやすく、予見可能性も高いという点で優れている。
◆3つの目標水準と2つの賃金上昇率見通しをもとに6つのシナリオを作成し、2030年度までに必要な最低賃金の引き上げ率や金額を試算した。引き上げ率は年率1.2%~5.7%で、このうち引き上げ率が最も高いシナリオでは2030年度の最低賃金がおよそ1,500円になる。ただし、平均賃金対比の最低賃金を主要国で最高水準並みに引き上げ、生産性上昇率が大幅に高まることが想定されている。仮に「最低賃金1,500円」を目指すならば、いつまでに、どのような経済環境の下で実現するのかも議論する必要がある。
◆欧州型の最低賃金目標の導入を軸に、日本で今後検討すべき主なポイントとしては、①目標に対する労使のコミットメント、②参照賃金の整備、③EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)の強化、④最低賃金の減額措置・適用除外、の4つが挙げられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2026/8/5号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2026年08月05日
-
2026年4-6月期GDP(1次速報)予測~前期比年率+2.9%を予想~
個人消費の増加と中東情勢による輸入の減少で3四半期連続プラス
2026年07月31日
-
2026年6月雇用統計
失業率は2.5%と前月から横ばい、就業者数は減少
2026年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

