サマリー
米国の中堅銀行の経営破綻に端を発した金融システム不安が高まってから1ヵ月が経ち、破綻の連鎖が防がれたため、金融市場は落ち着きを取り戻している。もっとも、金融システム不安が解消されるまでには時間を要すると見込まれ、銀行の貸出姿勢の厳格化、企業の投資意欲や家計の消費意欲の後退等の影響が世界経済に及ぶことが予想される。IMFは、大幅な信用収縮が生じれば2023年の世界経済が1%に減速するというリスクシナリオを示している。他方、この1ヵ月間で目立ったのが中国を中心とした各国首脳の活発な往来である。3月下旬に中国の習近平主席がロシアを訪問した他、スペインのサンチェス首相やフランスのマクロン大統領、EUのフォンデアライエン欧州委員会委員長等、欧州からの訪中が相次いだ。一方、中国と対立する米国は経済安全保障の観点から、半導体関連の輸出規制に続いて対中投資抑制策を公表する予定である。各国とも中国は主要な貿易相手だが、欧州の中国との距離感は米国と異なり、総じて中国との関係継続を重視し、フォンデアライエン委員長は、中国への過度な依存度を引き下げてリスクを減らしていくデリスキングを主張する。中国との関係は、裏を返せば、米国との距離感をどう保つかに言い換えられる。米国自身、中国とのデカップリングを進めると同時に、フレンド・ショアリングという同盟・友好国との関係強化を図っている。だが、4月半ばに発表された米国のEV購入の税優遇策では米国メーカーのみが対象となった。米政府はルールを厳格に適用しただけだろうが、優遇を期待していた米国と近しい関係の国々からすれば思惑が外れた形だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2023年4月
金利が上昇したら日本経済はどうなるか
2023年04月20日
-
米国経済見通し 景気後退は近いのか?
企業関連は景気後退に近づくも、家計・雇用関連はまだ距離がある
2023年04月20日
-
欧州経済見通し 引き続きリスクを意識する
2023年を上方修正する動きはあるが、トータルでは変わらず
2023年04月20日
-
中国経済見通し:リベンジ消費>不動産不況
1月~3月は4.5%成長。年間成長率予想を5.6%→5.9%に引き上げ
2023年04月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
-
急速に広がる資格情報等のデジタル化
利用時に気をつけるポイントと求められるデジタルリテラシー
2025年04月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日