【改訂】電気料金支援策による家計・企業への影響

家計・企業への支援総額は年間2.7兆円程度の見込み

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2022年10月24日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 中村 華奈子

サマリー

◆岸田文雄政権は総合経済対策に電気料金の引き下げを盛り込む方針である。10月14日に公表した筆者のレポートでは、政府による電気料金引き下げによる支援額をメインシナリオで4.2兆円程度と試算したが、本稿ではその後の岸田首相の発言等を踏まえ、再試算を行った。規制料金の値上げなどにより2023年4月以降の電気料金が引き上げられ、この上昇分を政府が補助する場合、2023年の1年間の支援総額は2.7兆円(家計:0.8兆円、企業:1.9兆円)程度と試算される。

◆家計に対する負担軽減額を可処分所得対比で見ると、低所得の勤労者世帯や、年金受給者が多く含まれる無職世帯で高い。必需品を中心に値上げが広がる中、電気料金の引き下げはとりわけ低所得世帯の消費者マインドの悪化を幾分和らげるだろう。企業の負担軽減額を売上高対比で見ると、「鉄鋼業」「その他の輸送用機械」のほか、対人接触型のサービス業も比較的高い。これらの業種では電気料金の引き下げによる効果が大きく表れそうだ。

◆政府は電気代のほか、都市ガス代の支援策と燃料油価格激変緩和補助金(いわゆるガソリン補助金)の延長も総合経済対策に盛り込む方針だ。度重なる物価高対策は財政を圧迫している。費用対効果の観点をより重視しつつ、対策の縮小や終了の条件を明確化するなど出口戦略の検討を進めることが重要だ。

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