電気料金支援策による家計・企業への影響

家計・企業への支援総額は年間4~9兆円程度の見込み

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2022年10月14日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 中村 華奈子

サマリー

◆岸田文雄政権は総合経済対策に電気料金の引き下げを盛り込む方針である。本稿執筆時点で詳細は明らかになっていないが、2022年6月に前年同月比+20~30%程度であった電気料金平均単価を2023年の1年間に2021年6月比+10%の水準まで引き下げる場合、支援総額は4.2兆円程度(家計:1.0兆円程度、企業:3.2兆円程度)と試算される。規制料金の引き上げなどで電気料金平均単価がこのメインシナリオよりも2割上昇した場合、支援総額は8.8兆円程度と大きく拡大する。

◆家計に対する負担軽減額を可処分所得対比で見ると、低所得の勤労者世帯や、年金受給者が多く含まれる無職世帯で高い。必需品を中心に値上げが広がる中、電気料金の引き下げはとりわけ低所得世帯の消費者マインドの悪化を幾分和らげるだろう。企業の負担軽減額を売上高対比で見ると、「鉄鋼業」「その他の輸送用機械」のほか、対人接触型のサービス業も比較的高い。これらの業種では電気料金の引き下げによる効果が大きく表れそうだ。

◆電力各社は燃料費高騰分を十分に価格転嫁できずに収益が圧迫されている。実際の電気料金を引き下げるためには、4.2兆円程度というメインシナリオの試算を大幅に上回る補助金が必要となる可能性があり、財政への影響が懸念される。補助金による電気料金の引き下げが十分に実施されていることを確認する仕組みも必要となろう。

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