サマリー
◆本稿では、2013年に導入された日本銀行の「量的・質的金融緩和」の変遷を振り返るとともに、現在の枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(YCC)について、その成果と課題を検討する。
◆YCCは国内でのインフレの進行や米国での金利上昇といった長期金利に対する上昇圧力が強い局面においてその効果が強く表れる。YCCの導入によって、2017年度から19年度の間、実質GDPは13兆円程度、コアCPIは0.4%程度押し上げられたとみられる。また、先行きについても、長期金利の上昇を抑制することで、当面の間、比較的大きな政策効果を発揮することが期待される。
◆今後の課題としては、①YCC終了に伴う市場の混乱リスク、②低金利の長期化による生産性低迷、③金利正常化局面での財政負担増加リスク、が挙げられる。①と③に関しては、2%の物価安定目標を達成した後、出口戦略の実施に伴い顕在化する可能性が高い。「量的・質的金融緩和」の導入当初から指摘されていた出口戦略のリスクについて、未だ十分な説明がなされていないことは大きな課題として挙げられる。
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