住宅「使い捨て」と環境負荷
~サステナビリティ重視の世の中で生じている大きな矛盾~
2022年05月19日
サマリー
◆住宅は建築・解体の際に大きな環境負荷がかかるため、サステナビリティの文脈でとらえた場合、省エネ性能とは別の視点からも問題を理解する必要がある。特に日本では、住宅着工数が多く、短期間で廃棄する「使い捨て」状態にあることから、地球環境の負荷を必要以上に増大させている可能性がある。
◆通常、一世帯が所有する住宅の数は限られるため、中古住宅の流通が広がれば、新築住宅の供給が抑えられると考えられる。また、家主が中古売却を念頭に置いて住宅を大切に使用するようになれば、実際の耐用年数が延びることもあり得よう。このため、政府として中古住宅市場の拡充を図ることは、環境問題への対応や住宅ストックを増加させる立場からすれば理に適っているといえる。
◆しかし、数々の施策が打ち出されているわりには、中古住宅の流通シェアはあまり拡大していない。この要因として、購入者側の「新築重視」の考え方があるのではないか。そうであるならば、改善に向けて必要なことは消費者の意識改革である。そのためには、環境省等が中心となり、地球環境の視点から消費者に対し、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」(※1)ことを直接訴えかけるようなメッセージの発信が求められる。
(※1)「住生活基本計画(全国計画)」(平成18年9月19日閣議決定)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2022年02月22日
なぜ今、「サステナブルファッション」が望まれるのか
~「サステナブル」は時代が求めるもの、ファッションが後れてはならない~
-
2021年12月06日
なぜ今、「アニマルウェルフェア」に向き合うべきなのか
二の足を踏む日本、「家畜を苦しませない」の世界的潮流に迅速な対応を
-
2021年09月03日
なぜ今、「フェアトレード」に注目すべきなのか
~SDGsが重視される中、生産者に犠牲を強いるビジネスは継続せず~
-
2021年04月20日
なぜ、ブルーエコノミーに注目すべきなのか
~海洋の適度な利用により、地球環境の持続可能性を向上~
-
2021年03月04日
なぜ今、「ワンヘルス(One Health)」なのか
~人、動物、生態系の健康一体で、動物由来の感染症を防げ~
-
2021年02月03日
なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか
~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年07月01日
2022年5月雇用統計
失業率は4カ月ぶりに上昇するも、均して見れば雇用環境は改善傾向
-
2022年07月01日
2022年6月日銀短観
外部環境悪化と国内経済活動再開が製・非製の業況の明暗を分ける
-
2022年07月01日
ディスクロージャーワーキング・グループ報告(コーポレートガバナンスの開示等)
-
2022年07月01日
内外経済とマーケットの注目点(2022/7/1)
米国の景気後退懸念と中国の経済再開期待が入り交じる可能性も
-
2022年06月30日
検証: レバレッジ型ETFへの長期投資
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年05月06日
FOMC 0.50%ptの利上げとQTの開始を決定
少なくとも7月のFOMCまでは毎回0.50%ptの利上げが続く見込み
-
2022年04月21日
日本経済見通し:2022年4月
資源高と「悪い円安」が重石に/日米で異なるインフレの特徴
-
2022年03月22日
日本経済見通し:2022年3月
ウクライナ情勢の緊迫化による日本・主要国経済への影響
-
2022年05月24日
中国:ゼロコロナ政策下の中国経済の行方
年後半は明確に回復も22年は4.5%程度の実質成長にとどまると予想
-
2022年04月22日
景気は良いのか悪いのか