サマリー
米国の利上げ開始が秒読みとなり、ユーロ圏でも年内の利上げの可能性が取り沙汰されている。米国の1月の消費者物価上昇率は前年比+7.5%、ユーロ圏は同+5.1%とそれぞれ事前予想を上回り、米国は約40年ぶり、ユーロ圏は1996年の統計開始以来の高インフレ率を記録した。背景には、世界的な供給網の混乱、人手不足に伴う雇用コスト上昇、地政学リスクも重しとなった原油価格高騰などが複合的に絡み合っている。ただし、米欧とも実質GDPがコロナ危機前の2019年10-12月期の水準を回復する中、金融政策をコロナ危機対応からインフレ対応に転換させるべき局面にあることも事実である。問題は非常に緩和的だった金融政策のスタンスを修正するにあたり、金融市場に大きな混乱を招かないことと、インフレを抑制することのバランスをどう取っていくかである。とりわけ米国の利上げは、米国の長期金利上昇とドル高の要因になりやすく、それが新興国の金融政策にも大きな影響を及ぼす。既に昨年から、通貨安とインフレ高騰への対策として利上げに転じた新興国は少なくない。多くの国で米国の利上げペースと為替動向を気にした金融政策運営が今年も継続されることになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2022年2月
経済見通しを改訂/変異株・資源高の動向には引き続き要警戒
2022年02月21日
-
米国経済見通し 過度な利上げ懸念はやめよう
足下の景気は悪くなく、FRBも景気に配慮し、バランス取りに注力
2022年02月21日
-
欧州経済見通し 欧州が直面するエネルギー危機
家計・企業の様々な負担が大幅に増える可能性
2022年02月18日
-
中国:全人代、「5%以上」の成長は可能なのか
「ゼロコロナ」と経済活動の両立を図る上海モデル
2022年02月18日
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/7/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年07月02日
-
2025年6月日銀短観
業況判断DI(最近)は底堅いが、先行きへの強い警戒が示された内容
2025年07月01日
-
2025年5月鉱工業生産
生産用機械工業などの増産で上昇も市場予想を大幅に下回る結果
2025年06月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日