サマリー
◆政府のオンラインサービスの充実度は諸外国に比べて低いわけではない。だが、世界銀行が公表するビジネス環境のスコアを見ると、日本は特に手続きの数やその日数といった面で諸外国に見劣りしている。ビジネス環境と経済成長の関係をもとに、仮に行政のデジタル化によってビジネス環境が大幅に改善すると、日本の一人当たり実質GDP成長率は1.1%ポイント高まる可能性がある。
◆特別定額給付金の支給に時間を要した一因は行政のデジタル化の遅れである。効率的に現金給付された国では、政府が国民識別番号に紐づけて個人の銀行口座情報を管理し、平時からその口座を政府と個人との現金のやりとりに利用している。デジタル技術を利用して給付の迅速性や効率性を高めることは、消費喚起策としての給付の費用対効果や、生活保護など社会保障の質を高める上でも重要である。行政サービスの質の向上にもつながるだろう。
◆行政のデジタル化を推し進めていく上での課題は多い。分権的な行政機能や業務プロセスの見直し、マイナンバーによる一元管理への不安払拭のほか、IT人材の少なさも挙げられる。政府だけでなく、行政サービスの利用者である企業や家計も加速するデジタル化に対応する必要がある。ポストコロナを見据えた社会的課題を解決する手段こそが「行政のデジタル化」であり、紙や判子を廃止してオンライン化すること自体がデジタル化の目的ではない。デジタル庁(仮称)には、将来の経済社会の青写真を描きつつ、全体最適の視点からデジタル化を主導していくことが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
一時152円台に突入したドル円レート、日本経済への影響と円高の背景
10円の円高ドル安でGDPは▲0.16%も多くの企業・家計にはプラス
2026年09月09日
-
2026年9月日銀短観予想
AI・半導体需要で製造業は改善、非製造業はコスト増で悪化を予想
2026年09月09日
-
鉱工業生産は当面AI・航空・防衛関連需要がけん引
他方で、中東情勢等による下振れリスクに注意
2026年09月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

