行政のデジタル化による経済活性化と課題

デジタル化の推進は一人当たり実質GDP成長率を1.1%pt押し上げ

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2020年11月25日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 永井 寛之
  • 経済調査部 エコノミスト 田村 統久
  • 遠山 卓人

サマリー

◆政府のオンラインサービスの充実度は諸外国に比べて低いわけではない。だが、世界銀行が公表するビジネス環境のスコアを見ると、日本は特に手続きの数やその日数といった面で諸外国に見劣りしている。ビジネス環境と経済成長の関係をもとに、仮に行政のデジタル化によってビジネス環境が大幅に改善すると、日本の一人当たり実質GDP成長率は1.1%ポイント高まる可能性がある。

◆特別定額給付金の支給に時間を要した一因は行政のデジタル化の遅れである。効率的に現金給付された国では、政府が国民識別番号に紐づけて個人の銀行口座情報を管理し、平時からその口座を政府と個人との現金のやりとりに利用している。デジタル技術を利用して給付の迅速性や効率性を高めることは、消費喚起策としての給付の費用対効果や、生活保護など社会保障の質を高める上でも重要である。行政サービスの質の向上にもつながるだろう。

◆行政のデジタル化を推し進めていく上での課題は多い。分権的な行政機能や業務プロセスの見直し、マイナンバーによる一元管理への不安払拭のほか、IT人材の少なさも挙げられる。政府だけでなく、行政サービスの利用者である企業や家計も加速するデジタル化に対応する必要がある。ポストコロナを見据えた社会的課題を解決する手段こそが「行政のデジタル化」であり、紙や判子を廃止してオンライン化すること自体がデジタル化の目的ではない。デジタル庁(仮称)には、将来の経済社会の青写真を描きつつ、全体最適の視点からデジタル化を主導していくことが期待される。

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