サマリー
インドのモディ政権が自立経済圏構想を掲げている。一見、従前の“Make in India”の発展形のようでもあるが、モディ氏があからさまな「国産」へのこだわりを見せているのは危険な兆候である。インドはかつて多くの途上国の経済活力を奪った「輸入代替工業化」の道を歩もうとしているようにみえる。インドだけではない。コロナショックは世界の各所で「自前主義」を跋扈させている。グローバルサプライチェーンのもろさを痛感した各国政府が、戦略物資や生活必需品を海外に依存することへの警戒感を強め、他国の不寛容(への懸念)が自国を不寛容にさせているということもあろう。さらにはコロナショックによる経済状況の劇的な悪化の中で余裕を失った各国政府が、輸入や主要輸入相手国を仮想敵に仕立てる誘惑に負けつつあるのかもしれない。こうした自前主義は当該国の成長力を損なうだけではない。国際的な経済的デカップリングが政治的、地政学的リスクを惹起するところにより深刻なリスクがある。端的には、密接な経済的リンケージゆえに米中関係が決定的に悪化することはない等々のロジックが破綻してしまうということだ。欧州で感染が再拡大するなど世界はコロナ禍の粘着性に手を焼きながらも、ぎりぎりまで経済を止めないという判断に傾きつつある。結果として世界経済が4-6月期の激震を繰り返す可能性は減じていると考えてよい。そうした中、真に警戒すべきは、自前主義の跋扈と米中関係の悪化がシンクロするというコロナの二次災害ではあるまいか。
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