サマリー
◆ユーロ圏ではロックダウンの段階的な解除を背景に小売売上高、鉱工業生産、輸出金額が5月以降は持ち直し傾向にある。7-9月期の成長率は、4-6月期の前期比▲11.8%という記録的な落ち込みから明確に反発すると見込まれる。もっとも、世界的な新型コロナウイルス感染は収束からは程遠く、欧州の新規感染者数も7月半ばに再び増加に転じて以降、拡大に歯止めがかかっていない。欧州各国は全面的なロックダウンの再導入は回避しようとしているが、感染防止のための様々な制約が景気回復ペースを鈍化させる要因となろう。9月のECB理事会では金融政策の変更はなかったが、景気の先行きに対する不透明感が強い中、下振れリスクへの強い警戒が示された。
◆英国では9月に入り、学校の再開に続いて人々に職場に戻ることを促す動きも一時見られたが、新型コロナウイルスの新規感染者が急増しており、感染の第2波への懸念が高まっている。感染抑制のための規制強化が図られる一方、英国政府は、経済活動への配慮から、今春に実施した厳格なフル・ロックダウンの再導入を回避しようと苦慮している。一方、移行期間終了後のEUとの将来関係を巡る協議が行き詰まっている現状において、北アイルランドを巡る問題が再燃し、交渉の行方は一段と不透明になっている。合意のないまま年末を迎えるリスクシナリオが現実になる確率は高まっている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日

