サマリー
中国が見せつけた4-6月期の実質成長率の急回復は、世界経済の今後にどのような示唆を与えるであろうか。もちろん、同期は中国がいち早くコロナ・ショックから抜け出す一方で、世界的には感染爆発、ロックダウンの嵐の中にあったわけであり、中国が供給ショックに見舞われた他国の生産を代替したという側面があった。7-9月期以降にこうした恩恵を受ける国・地域は現れない。また米国や日本(特に東京)の例が示すように、感染が再拡大してしまえばロックダウン的措置の有無にかかわらず経済活動正常化のペースは鈍る。こうした留意すべき点は確かにあるものの、7-9月期に(前年比ベースでのプラス転換はハードルが高いが前期比の数値の上では)V字に近い回復を遂げる国は少なからず出てくると思われる。足元までのグローバル株価の堅調や金融市場のストレスの低さもそうしたシナリオを織り込んでいるのであろう。もっとも、回復がひとたび現実のものとなれば、金融市場の焦点は回復の持続性に移る。さらには、回復を導くために払ったコスト、およびその副作用の有無も問われることになる。中でも財政赤字の事後処理は重要なポイントの一つとなろうが、ここで再度、先進国に比した新興国の不利が浮き彫りになる可能性がある。両者を分かつのは何より、危機に応じた資金調達力の強弱である。また気が付けば世界経済は、リーマン・ショック後と同じく中国主導の回復過程をたどろうとしている。同国のインフラ投資の加速と債務の膨張を伴っていることも同じだ。こうしたことすべての持続可能性が問われるのは、果たしてそう遠いことだろうか?
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2020年7月
迷走する需要喚起策 -ウィズコロナ下の経済運営は「急がば回れ」
2020年07月21日
-
米国経済見通し 追加支援を巡って正念場
7月末までに追加支援が合意されなければ、休会明けの9月まで先送り
2020年07月21日
-
欧州経済見通し まだら模様の景気回復
ロックダウン緩和を背景に5月は急反発したが先行き不透明感は強い
2020年07月22日
-
中国:投資主導で急回復。次は「接触型」消費
成長率見通しを上方修正。米国を中心とする対外関係悪化に要注意
2020年07月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日