サマリー
◆経済活動の段階的な再開により、日本経済は「戦後最悪」ともいわれる厳しい経済危機から脱しつつある。6月の貿易統計では、輸出数量指数が4カ月ぶりに前月比で増加した。個人消費は緊急事態宣言の全面解除や政策効果もあって5月に持ち直し、6月は回復基調が強まった。ただし4-6月期の実質GDP成長率は年率換算▲20%台後半と、過去最大の減少率が見込まれる。
◆家計所得の大幅減や連鎖倒産が回避されたことも個人消費の回復に寄与した。各種給付金などにより、家計の可処分所得は4-6月期に減少したどころか急増した。また同四半期の倒産件数は約30年ぶりの低水準だった。売上高に比した手元資金は特に中小企業で厚かったことに加え、政府・日銀による大規模な資金繰り支援策が下支えした。
◆感染収束に目途がつかない中、需要喚起策には感染拡大リスクが常に伴う。「Go To キャンペーン」の混乱で浮き彫りになったように、政府の需要喚起策は感染拡大防止と両立させるという視点が不十分だ。1カ月間で3.9兆円程度の消費減少が見込まれる緊急事態宣言の再発出の回避を最優先し、経済活動の正常化を着実に進める必要がある。そのためにも、経済活動を漸進的に再開させ、小規模で感染拡大リスクに十分に配慮した需要喚起策を実施するという「急がば回れ」の経済運営が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
主要国経済Outlook 2025年6月号(No.463)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年05月26日
-
世界経済は落ち着きを取り戻すのか
2025年05月26日
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日