サマリー
1-3月期の中国のGDP統計は壊滅的な悪化を示したものの、3月の月次統計には若干ながら持ち直しの動きも確認できる。新型コロナウイルス感染拡大にピークアウトの兆しが見られる欧米諸国では、段階的な経済活動再開が検討され始めている。尚早という声があることは確かだが、世界的な感染拡大と景気見通しの悪化が同時的に、かつ猛烈なスピードで進む状況ではなくなりつつある。ただし、ブラジル、トルコ、インド、ロシアなど少なからぬ新興国の新規感染者が増加していることは目下、最大の懸念材料である。いうまでもなく新興国は欧米諸国以上に医療崩壊までののりしろが小さい。経済活動の停滞が社会不安や政治の流動化に結び付くリスクもある。IMFは2020年の世界経済の成長見通しを▲3.0%と大幅に引き下げたが、新興国については再度の下方修正の余地が大きいように思われる。いずれにせよ、世界経済が「コロナ以前」の水準に戻るには相当の年月を必要としよう。従ってこの間、経済政策的には雇用の底上げを最優先の課題とし続けざるを得ない。生産性の引き上げという先進国の共通課題は、いったん後景に退くことになろう。また各国・地域が未曽有の景気対策を行う結果、世界的な財政赤字の急増が不可避となっている。それは果たして世界のカネ余りを解消させるのだろうか、あるいは財政赤字の大規模な貨幣化が常態化するのだろうか。それらは世界的な超低金利やディスインフレと併存可能なのだろうか。コロナショックと闘いながらも、我々はコロナ後のニュー・ノーマルへの備えも始めなくてはならない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2020年4月
「ウィズ・コロナ時代」の産業インプリケーション
2020年04月21日
-
米国経済見通し ロックダウン緩和の期待と現実
2020年の実質GDP成長率は前年比▲3.5%を予想
2020年04月21日
-
欧州経済見通し 「正常化」へ最初の一歩
ロックダウンの解除は長期戦
2020年04月21日
-
中国:もたつく景気回復、20年はゼロ近傍に
景気浮揚、スタートラインの全人代は5月後半以降に後ずれか
2020年04月21日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日