サマリー
◆3月短観では、大企業製造業の業況判断DI(最近)は▲8%pt(前回差▲8%pt)、大企業非製造業の業況判断DI(最近)は8%pt(前回差▲12%pt)と、いずれもアベノミクス以前の水準へと悪化した。業況判断DI(先行き)でも、大企業製造業が▲11%pt(今回差▲3%pt)、大企業非製造業が▲1%pt(今回差▲9%pt)と、悪化が続く見込みだ。
◆2月下旬以降本格化したコロナ禍に伴う経済的打撃を主要経済統計の中では最も早く反映した統計が今回の短観である。しかし前述の結果はいずれも事前予想を上回った。回答期間が2月25日~3月31日と長く、コロナ禍に伴う打撃-とりわけ欧米向け輸出の悪化-を十分に反映できていない可能性が指摘される。
◆大企業全産業の2019年度売上高計画は前年度比▲1.6%と小幅に下方修正された一方、経常利益計画は同▲8.7%と小幅に上方修正された。また、今回から2020年度の計画が公表されているが、売上高については同+0.6%と小幅な回復、経常利益については▲1.9%と小幅な悪化が見込まれている。しかしこれはコロナ禍の打撃が小さいということではなかろう。むしろ、不透明性が高い現状に鑑み、十分な計画修正が行われていないということを意味しているとみられる。
◆設備投資計画についても同様の指摘がなされよう。2019年度の全規模全産業の「設備投資計画(含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)」は、前年度比+2.7%へと小幅に下方修正されたが、これは例年並みの修正にとどまっている。また、2020年度の設備投資計画は同▲0.4%となったが、こちらも期初の計画としては前回の景気の山に相当する2007年度以来の高さである。コロナ禍の影響を見定めながら、今後逐次的に下方修正されていく公算が大きい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2020年3月
コロナショックの主戦場は「需要崩壊」と「信用収縮」へ
2020年03月18日
-
日本経済見通し:2020年2月
新型コロナ問題の本質 / 業績悪化懸念下でも株高現象の正体
2020年02月21日
-
2020年 世界経済のリスク分析
「適温経済」シナリオに潜む落とし穴を検証
2020年01月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年3月雇用統計
失業率は上昇するも、求人倍率が上昇するなど雇用環境は悪くない
2025年05月02日
-
消費データブック(2025/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年05月02日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日