サマリー
◆新型コロナウイルス感染はもはや世界的パンデミックの様相を呈している。その経済的打撃は、究極的には全ての国・地域の最終需要を数か月単位で消失させると想定せざるを得ない。また需要の減退が雇用・設備投資意欲の悪化を通じて長期的な潜在成長率を押し下げる「履歴効果」の発現も懸念される。世界経済・日本経済の成長経路は大幅な下方屈折に向かっている。
◆こうした長期的見通しを踏まえながらも、敢えて足下の動きを整理すると、①地理的な感染拡大、②供給ショックから需要ショックへの移行、③クレジットクランチ懸念、の三点が特筆に値する。①②に関しては、総体として日本経済に与える打撃は「累増」という整理で問題ないだろうが、業種別に見ると短期的に優勝劣敗が生じる可能性が指摘される。例えば、過去の懸念は中国現地における製造業の稼働率低下に伴う素材・電機機器関連産業だったが、2月下旬以降、その震源地は日本国内のサービス消費関連産業に移行し、そして現在は欧米の最終需要-とりわけ資本財関連産業にシフトしている。
◆③に関しては、景気悪化に加えて減産合意不成立を受けた原油安が、社債利回りの上昇を経由して、リーマン・ショック以降累積されたレバレッジの逆回転を発生させている。対する各国中央銀行の奮闘が続いており、とりわけFRBによるCPへのプットオプション提供などは特筆すべきものだが、未だ金融不安への懸念は色濃く残る。低格付け社債市場の混乱拡大、およびECBの不十分といえる対応を受けた欧州発の金融不安の発現可能性には細心の注意を払っておく必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2020年2月
新型コロナ問題の本質 / 業績悪化懸念下でも株高現象の正体
2020年02月21日
-
2020年の日本経済見通し
成長再加速に向けて鍵を握る、グローバルな製造業の回復シナリオ
2019年12月19日
-
2020年 世界経済のリスク分析
「適温経済」シナリオに潜む落とし穴を検証
2020年01月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年10月号(No.467)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年09月25日
-
トランプ政権には懐柔か、対抗か
2025年09月25日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日