新型肺炎拡大に伴う株価急落が個人消費に及ぼす悪影響は限定的か

逆資産効果は活動自粛や制限措置の影響によってかき消される可能性

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2020年03月18日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 山口 茜

サマリー

◆日本や欧米の代表的な株価指数は、年初来高値から30%ほど下落している。今回のような株価の大幅な調整局面では、保有資産の価値の下落に伴って家計が消費を抑制する行動、つまりマイナスの資産効果(「逆資産効果」ともいわれる)が懸念される。

◆株価の変動によって家計の保有する金融資産の価値が100円変化すると、日本の個人消費は3.0円程度変化すると推計される。これは2~4円程度とされる先行研究の中央値に位置している。推計結果を機械的に当てはめれば、株価が前年から30%下落すると、実質個人消費は年0.5%程度(1.6兆円程度)減少する。

◆高齢化の進展で、株式資産の大部分は高齢世帯が保有するようになっており、資産効果の影響を受けやすい不要不急の消費は以前よりも減少している。そのため現実に生じる資産効果は推計結果よりも小さいだろう。また、経済活動の自粛が2月下旬から全国的に広がったことで、不要不急の消費はすでに抑えられている。こうした点を踏まえれば、今回はマイナスの資産効果が個人消費に及ぼす悪影響は限定的と考えられる。 

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