サマリー
◆日本の労働市場は新たな局面を迎えている。生産年齢人口の減少自体は1990年代中盤から始まっているが、空洞化進展により2010年頃までは人手不足は顕在化しなかった。しかし単位労働コストの相対的低下を受けて企業は安価な未活用労働力を求め始めた。その大宗を占めていたのは女性の短時間労働者であったが、過去数年間で女性の労働参加率は30-50代を中心に大幅改善しており、これ以上の「頭数」確保は難しい。結果として企業は①非正規社員の正規化による平均労働時間の延長と、②新たな未活用労働力(=若年層、高齢者、外国人)の確保に乗り出している。
◆人手不足が深刻化する一方で平均賃金が上昇しないことを以て、フィリップスカーブの有効性を疑問視する声もある。しかし賃金版フィリップスカーブを年代別に分解すると、現代日本でも未だにその有効性は健在だ。本質的な問題は、労働市場が若年層「のみ」でタイト化しており、中高年のスラックは未だ大きいということにある。言葉を変えると、企業が求める人材像(労働需要)と労働供給の間に「世代間のミスマッチ」が発生しており、局所的に賃金インフレとデフレが混在しているのが労働市場の現状である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
日本が取り組むべきは「現役期」の格差是正
給付付き税額控除と所得税改革などで貧困層を支えよ
2025年08月25日
-
2025年7月全国消費者物価
単月で見れば弱めの結果も上昇基調は引き続き強い
2025年08月22日
-
2025年7月貿易統計
トランプ関税や半導体関連財の需要一服で輸出金額は3カ月連続の減少
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日