サマリー
9月13日にトルコ中銀が政策金利を6.25%引き上げて24%としたことで、トルコ・リラ崩落懸念はひとまず後退した。しかし前途は多難である。エルドアン大統領の露骨な介入と対峙しながら、今後も納得性の高い金融政策を実行していかなければ、リラ安圧力は容易に再燃する。また、高インフレと高金利のもとで、2019年にかけての内需が相当傷むことは恐らく避けられない。さらに問題なのは、リラ安圧力の強弱が相当程度グローバルな金融環境で決まってしまうことである。現在のリラ安は、ドル高・新興国通貨安の一環として起こっている。その背景には米国の独り勝ち的な経済の状況がある。もちろん、いずれ状況は変わる。継続的なドル高は米国自身の景気の逆風になるであろうし、税制改革による成長加速の反動も来よう。しかし、その世界経済にとっての意味が、「米国独り勝ち」から「けん引役不在」への転換であるなら、新興国通貨安は継続する可能性がある。景況感の悪化がリスク・オフ的状況を招来し、最強通貨がドルから円に変わる一方で、新興国の相対不利は継続する可能性があるからだ。その際、懸念されるのは、トルコやアルゼンチンの危機の深刻化は無論のこと、現在軽症の新興国群から第三、第四のトルコやアルゼンチンが出てきてしまうことである。新興国には広く、通貨安圧力の長期化を前提とした、慎重な財政・金融政策の遂行が求められよう。
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