米国経済見通し 米中貿易戦争はさらに激化

対中追加関税第3弾を決定、関税対象は消費財にも拡大

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2018年09月19日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆トランプ大統領は、9月17日、1974年通商法301条に基づく中国に対する制裁措置の第3弾として、2,000億ドル相当の輸入品に対する追加関税の実施を正式に決定した。9月24日に発動される新たな追加関税では、対象品目に対して当初は10%の追加関税が課され、追加関税率は2019年1月1日以降、25%に引き上げられる。

◆対中追加関税第3弾では、これまでの関税よりも対象品目数が大幅に増加しており、幅広い業種の企業でコストの増加が見込まれる。また、これまでほとんど対象となっていなかった消費財が全体の2割強を占めていることから、家計へも輸入価格上昇の悪影響が波及しやすくなると考えられる。

◆追加関税の導入やNAFTAでの原産地規制の強化は、国際分業のメリットを放棄するものであり、基本的には米国経済にとってネガティブである。しかし、米国による追加関税リスクが高まる中で、米国内での投資が喚起される可能性も否定できない。実際、3月から追加関税が課されている鉄鋼・アルミ製品を含む一次金属産業では、関税の実施以降、輸入が減少し、輸入浸透度の低下が見られている。

◆米国経済は先行きも内需主導の底堅い成長が続くと見込むが、短期的なかく乱要因として、ハリケーン・フローレンスの影響には注意が必要である。個人消費や、住宅投資などを中心に需要面での下押しが見込まれる他、生産活動への悪影響も避けられないだろう。他方、被害からの復旧・復興の過程では、むしろ需要が実力以上に押し上げられるとみられ、当面、経済指標の振れが大きくなる可能性がある。

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