あえて年収を抑える559万人

就業を阻む「壁」の取り壊しと年金制度改革が必要

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2018年07月24日

  • 山口 茜

サマリー

◆平成29年就業構造基本調査のデータを基に、就業調整(収入を一定の金額以下に抑えるために就業時間・日数を調整すること)の実態についてまとめた。就業調整を行っている人は559万人存在し、非正規雇用者全体の26%に相当する。就業調整を行っているのは、①既婚女性、②高齢者、③若年層である。

◆既婚女性(15~59歳)では、330万人が就業調整を行っており、これは、同区分の非正規雇用者の約半数に相当する。就業調整を行っている人の92%が「50~99万円」、「100~149万円」に属しており、「103万円の壁」や「130万円の壁」といった就業の壁をかなり意識していることが示唆される。

◆60歳以上では、112万人が就業調整を行っている。そのうち、60~64歳は50万人である。特に60~64歳は、在職老齢年金制度により、一定の金額を超えると年金額が減額されることが就業を阻害している可能性が高い。

◆15~24歳(男性+未婚女性)では、70万人が就業調整を行っている。親の扶養に入るかどうかの「103万円の壁」を意識している人が多いことが示唆される。 

◆人手不足が深刻な日本では、労働供給の伸びしろも限られてきている。限りある労働力を最大限活用するためにも、社会保険加入の「130万円の壁」や「在職老齢年金制度」などの、就業を阻害する各種制度の見直しを早急に行うことが求められる。

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