サマリー
中国の全人代で国家主席の任期が撤廃されたことは、広く指摘されるように、習近平氏の長期政権の布石であろうが、同時に、こうした不穏な決定を強行できるほどに、習氏の権力掌握が進んでいることを示唆している。では、それは今後の中国の経済政策や外交、通商政策にどのような影響を与えるであろうか。トップダウンで政策を遂行する自由度が高まったことが、より慎重で現実的な政策を選択させるのか、或いは、力技で手にした権力をより盤石なものとし、求心力を高めることを目的に、必ずしも合理的ではない政策に訴える可能性がむしろ増しているのかが問題である。折しも米国は、中国を主要ターゲットの一つとした保護主義姿勢を強めている。輸出依存度の高い中国の合理的対応は、報復の回避に他ならないが、「中華民族の偉大な復興」に近づきつつあると宣言する習氏が、不合理な米国の攻勢に対し、合理的な対応に徹することは容易ではないかもしれない。米国の場合、中間選挙に向けた国内向けポーズという色彩が濃いが、事実上、国政選挙の存在しない中国にも、強権を正当化する上である種のポピュリズムが必要とされるということか。不合理の応酬が激化した時、スロートレードの復活、世界経済の混乱のリスクが高まる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2018年3月
『春闘・賃上げで消費拡大』シナリオの総括的検証
2018年03月23日
-
米国経済見通し 関税導入で高まるリスク
輸入価格の上昇や対抗措置は米国にとってネガティブ
2018年03月23日
-
欧州経済見通し 景気見通しに落ちる影
貿易摩擦とBrexit
2018年03月23日
-
中国:下振れリスクが後退、強い不動産投資
輸出・生産の好調と環境負荷の増大
2018年03月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
人手不足下における外国人雇用の課題
労働力確保と外国人との共生の両立には日本語教育の強化が不可欠
2025年11月06日
-
消費データブック(2025/11/5号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年11月05日
-
2025年9月鉱工業生産
生産用機械工業などの増産で上昇も、先行きは軟調な推移を見込む
2025年10月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

