サマリー
◆内需の好循環を加速させる起爆剤として、春闘は注目されてきた。しかし例年と同様、今回の賃上げ率も政府が目標として掲げてきた3%には遠く及ばず、また、日本全体で見て企業収益が過去最高を更新し続ける中、物足りないものにとどまった。「日本経済見通し:2018年1月(※1)」でも指摘したように、本格的な賃金上昇を実現する上では、労働市場改革を中心とした施策による生産性の向上と、国際競争を背景とした重商主義的な政策からの脱却の両方が求められることになるだろう。
◆もちろん、短期的な景気循環の観点から言えば、今回の春闘における賃上げ率は前年を明確に上回っていることも事実である。しかし足下では体感物価の上昇がもたらす実質所得押し下げ効果が賃上げ率の加速度を圧倒的に凌駕している。消費の回復拡大が継続するためには、物価上昇率が落ち着きを取り戻すことが肝要となる。また、現時点では顕在化していないものの、長期的に懸念されるリスクとしては賃金カーブの一段のフラットニング、残業規制に伴う所定外給与の削減、各種保険料等負担の再引き上げなどに引き続き注意が必要だ。
◆2017年10-12月期GDP二次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2017年度が前年度比+1.8%(前回:同+1.7%)、2018年度が同+1.2%(同:同+1.3%)、2019年度が同+0.8%(同:同+0.8%)である。日本経済は、①堅調な外需、②在庫投資、③耐久財の買い替え需要に支えられて、成長の加速を続けてきた。しかし、これら三つの要因が剥落することに加え、2019年10月に予定されている消費増税に伴う負の所得効果が見込まれる中、先行きの日本経済は2019年度にかけて減速を続ける見通しである。
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