サマリー
英国ではメイ首相が自ら仕掛けたギャンブルに負けるという失態を演じ、Brexitの帰趨を覆う暗雲が厚さを増している。一方、フランスではマクロン大統領率いる「共和国前進」が下院選挙で大勝し、今後の政権運営にかかわる不確実性が後退した。Brexitを巡るごたごたは、他のEU加盟国における反EUの勢いを殺いでおり、それが一連のフランスの選挙にも反映されている。EUはユーロ圏危機を招いた「中途半端な統合」が解消されていないなど、随所に火種を抱えており、その克服には政治的リーダーシップの存在が不可欠である。その意味で、フランスに相応の(盤石ではないにせよ)政治資本を有する親EU政権が誕生したことの意味は小さくない。そう考えれば、英国経済の先行きには相当の警戒が必要である一方、プラスマイナス差し引きで考えれば、このところの欧州発のニュースは、欧州経済、ひいては世界経済に若干のプラスとみなすことが可能だろう。現在の世界経済の好調は、米・欧(ユーロ圏)・中の三極に支えられたものだが、ユーロ圏は米国ほど循環的な成熟化が進んでいるわけではなく、中国と違って政策依存の色彩も薄い。2018年に向けて順調な拡大が期待されるユーロ圏経済の懸念が一つ遠のいたことは、世界経済のダウンサイドリスクの軽減に資するとみてよいだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:金利上昇の景気引き締め効果に要注意
重点は「金融リスクの防止」から「経済成長の安定化」に移行か
2017年06月21日
-
欧州経済見通し ユーロ圏と英国の明暗
Brexit交渉と経済の相互作用が注目される
2017年06月20日
-
米国経済見通し インフレ動向を注視
インフレ率の減速は悪いことではない
2017年06月20日
-
日本経済見通し:2017年6月
賃金インフレへのカウントダウン? / Fed出口戦略が世界経済に与える影響は?
2017年06月21日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日