サマリー
英国ではメイ首相が自ら仕掛けたギャンブルに負けるという失態を演じ、Brexitの帰趨を覆う暗雲が厚さを増している。一方、フランスではマクロン大統領率いる「共和国前進」が下院選挙で大勝し、今後の政権運営にかかわる不確実性が後退した。Brexitを巡るごたごたは、他のEU加盟国における反EUの勢いを殺いでおり、それが一連のフランスの選挙にも反映されている。EUはユーロ圏危機を招いた「中途半端な統合」が解消されていないなど、随所に火種を抱えており、その克服には政治的リーダーシップの存在が不可欠である。その意味で、フランスに相応の(盤石ではないにせよ)政治資本を有する親EU政権が誕生したことの意味は小さくない。そう考えれば、英国経済の先行きには相当の警戒が必要である一方、プラスマイナス差し引きで考えれば、このところの欧州発のニュースは、欧州経済、ひいては世界経済に若干のプラスとみなすことが可能だろう。現在の世界経済の好調は、米・欧(ユーロ圏)・中の三極に支えられたものだが、ユーロ圏は米国ほど循環的な成熟化が進んでいるわけではなく、中国と違って政策依存の色彩も薄い。2018年に向けて順調な拡大が期待されるユーロ圏経済の懸念が一つ遠のいたことは、世界経済のダウンサイドリスクの軽減に資するとみてよいだろう。
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