米国経済見通し インフレ動向を注視

インフレ率の減速は悪いことではない

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2017年06月20日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆金融政策の先行きはあくまで経済指標次第というスタンスが続くとみられるが、とりわけインフレ率の動向が今後の金融政策を左右すると考えられる。更なる金融引き締めが実施されるためには、足下で減速しているインフレ率が再び、目標である2%へと加速していくという確信が得られる必要がある。そのためには少なくとも数ヵ月間はインフレ関連指標を見極める必要があるとみられる。


◆このところインフレ率が減速する一方、1-3月期の景気減速から持ち直しの動きが見られ、足下の米国経済は総じて底堅い。足下までの経済統計を踏まえると、4-6月期は個人消費の伸びが高まることを主因にGDP成長率が再加速する見通しである。1-3月期に高い伸びとなった設備投資、住宅投資の伸びは縮小が見込まれるものの、増加は維持し、引き続き成長率を押し上げると見込まれる。


◆インフレ率が緩慢な上昇に留まっていることは、金融政策の正常化という文脈では懸念材料だが、景気にとってはむしろポジティブな要因と捉えることができる。また、景気拡大が続く一方でインフレ率の加速が見られず、それによって金融引き締めが先送りされれば、景気拡大の持続性が高まり、資産価格にとって望ましい状況が続くことになる。


◆資産市場でのバブルの発生もFRBにとって望ましいことではない。つまり、仮にインフレ率がここから加速しなかったとしても、株式市場などの資産市場が過熱しているとFRBが判断した場合には、それを理由に引き締めに動く可能性があろう。バブルを抑制するための政策としては、追加利上げではなくバランスシートの縮小が選択される可能性がある。

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