サマリー
◆金融政策の先行きはあくまで経済指標次第というスタンスが続くとみられるが、とりわけインフレ率の動向が今後の金融政策を左右すると考えられる。更なる金融引き締めが実施されるためには、足下で減速しているインフレ率が再び、目標である2%へと加速していくという確信が得られる必要がある。そのためには少なくとも数ヵ月間はインフレ関連指標を見極める必要があるとみられる。
◆このところインフレ率が減速する一方、1-3月期の景気減速から持ち直しの動きが見られ、足下の米国経済は総じて底堅い。足下までの経済統計を踏まえると、4-6月期は個人消費の伸びが高まることを主因にGDP成長率が再加速する見通しである。1-3月期に高い伸びとなった設備投資、住宅投資の伸びは縮小が見込まれるものの、増加は維持し、引き続き成長率を押し上げると見込まれる。
◆インフレ率が緩慢な上昇に留まっていることは、金融政策の正常化という文脈では懸念材料だが、景気にとってはむしろポジティブな要因と捉えることができる。また、景気拡大が続く一方でインフレ率の加速が見られず、それによって金融引き締めが先送りされれば、景気拡大の持続性が高まり、資産価格にとって望ましい状況が続くことになる。
◆資産市場でのバブルの発生もFRBにとって望ましいことではない。つまり、仮にインフレ率がここから加速しなかったとしても、株式市場などの資産市場が過熱しているとFRBが判断した場合には、それを理由に引き締めに動く可能性があろう。バブルを抑制するための政策としては、追加利上げではなくバランスシートの縮小が選択される可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日