サマリー
◆ユーロ圏の1-3月期の成長率は速報値の前期比+0.5%から同+0.6%に上方修正された。消費者と企業の景況感は良好で、消費、投資、輸出がそろって拡大するバランスの良い経済成長が今後も見込まれる。また、フランスのマクロン大統領が下院議会選挙でも勝利したことで、今年前半のユーロ圏を覆っていた政治リスクへの懸念はいったん後退した。なお、ECBの金融緩和スタンスがどう変化するか注目された6月8日のECB理事会では、追加利下げへの言及が削除された。ただし、2019年までの成長率予想は上方修正された一方、インフレ率予想は下方修正され、緩和解除に慎重な姿勢は変わらなかった。ECBは来年には資産買取額の減額に動くと予想されるが、それが具体的に言及されるのは夏休み明け以降のECB理事会でとなろう。
◆英国の1-3月期の成長率は速報値の前期比+0.3%から同+0.2%に下方修正された。10-12月期の同+0.7%から急減速した原因は、予想通り個人消費であった。インフレ加速で実質的な購買力が低下し、消費が減速するという、Brexit(英国のEU離脱)決定に伴うポンド安の悪影響が遅ればせながら顕在化してきたのである。そのBrexitを実現させるための英国とEUの交渉が、国民投票からほぼ1年が経過した6月19日にようやく開始された。ただし、6月8日の下院議会選挙で保守党は予想外の過半数割れとなり、この選挙結果が政府のEU離脱に関する方針にどのような影響を及ぼすのかまだ明確ではない。加えて、英国の景気減速が国民のBrexitに対する支持を揺るがす可能性がある。Brexitの行方は一段と混沌としており、それが英国の企業や消費者のマインドをさらに悪化させることが懸念される。
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