サマリー
米国のトランプ政権はフリン補佐官の辞任やメディアへの派手な攻撃など、ゴタゴタを繰り返しながらも、減税を示唆する発言などを通じ、同国の景気拡大に対する市場の期待を維持することには成功している。それは株高を継続させ、堅調な住宅価格と相まって、資産効果から米国の内需を、実際の景気刺激策の発動に先駆けて、刺激し始める可能性がある。一方、日欧はこのところ外需の好調などから景気の底堅さが増しており、米国の内需拡張は日欧の外需主導の成長パターンをより強固にすることにも貢献しよう。資源価格の安定が新興国の景況感を支えていることもあり、短期的な世界経済の見通しは比較的良好である。もっとも、短期的な見晴らしの良好さは、世界経済の拡大の持続可能性に疑念を生じさせる要因ともなり得る。この点、さしあたり重要なのは、米国における労働需給のひっ迫を可能な限り回避、先送りすること、それにより、賃金インフレ圧力の増大に起因する米国の金融引き締め強化を回避することであろう。米国の内需の失速が、世界経済拡大の持続性にかかわる最大の懸念であることを踏まえれば、トランプ政権が目指すべきは雇用の拡大ではなく、労働供給の拡大、或いはマクロベースの生産性上昇である。司法の壁に直面したトランプ氏が移民政策をどう変えてくるのか、こないのかが注目されるゆえんである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:地方の経済目標からみる景気の安定化
財政収入虚偽問題に揺れる遼寧省、2016年は唯一のマイナス成長
2017年02月22日
-
欧州経済見通し 短期上振れ、中期は不透明
注目点は外需回復の持続性
2017年02月22日
-
米国経済見通し 高まる減税への期待
政策の具体像は近く明らかになる見込みだが、実現性は不透明
2017年02月22日
-
日本経済見通し:トランプ政権成立で何が起きるのか?
国境税調整導入は日本の実質GDPを▲0.4%程度下押しする見通し
2017年02月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日