サマリー
◆ニューノーマル(新常態)への移行には、痛みを伴う部分があり、2015年にかけて、東北三省(遼寧省、黒竜江省、吉林省)、山西省、河北省といった重工業・資源依存度の高い地方の成長率は大きく低下した。こうしたなか、中国政府は乗用車と住宅の購入刺激策を打ち出し、乗用車・住宅市場の活況は、鉄鋼や電力(中国は石炭火力が中心)の需要を高めた。2016年の中国経済の特徴の一つは、従来型産業が景気の下支え役を果たしたことであったが、それには、ニューノーマルへの移行の痛みが強く出た地方経済への政策手当てという側面があったのである。
◆2016年の中国の実質GDP成長率は前年比6.7%と、2015年の同6.9%からは若干の低下にとどまった。全体として景気減速ペースが緩やかになるなかで、2016年の遼寧省の実質経済成長率は前年比▲2.5%と唯一のマイナス成長に落ち込んだ。2011年~2014年の財政収入の水増しが判明し、固定資産投資は2015年に同27.5%減少、さらに2016年には同63.5%の急減を記録した。ニューノーマルへの移行の痛みが出た面はあったにせよ、それ以上に、無い袖は振れない状況であったことは想像に難くない。
◆2017年3月5日から始まる第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議を前に、各省・自治区・直轄市では、地方の人民代表大会が開かれ、2017年の実質経済成長率目標などが発表されている。目標を大きく下げた地方は皆無であり、ニューノーマルへの移行が一段落し、地方政府レベルでも経済の安定化が重視されていることが分かる。
◆全人代で発表される2017年の全国の政府経済成長率目標は、2016年の前年比6.5%~同7.0%のようなレンジとはならない可能性が高い。2016年はレンジで提示した地方が8地方であったが、2017年は2地方に減少した。2017年秋に第19回党大会の開催を控え、経済の「安定」を最優先しつつ、構造改革をある程度進めるのであれば、2017年の成長率目標は6.5%前後に設定される可能性が高いのではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:堅調スタートも持続性には疑問符
不動産不況、需要先食いのツケ、中東情勢緊迫化
2026年03月24日
-
中国:第15次5カ年計画を読み解く
成長率目標は設定されず。数値目標は安全保障の優先度上昇を示唆
2026年03月16日
-
中国:成長率目標引き下げも達成は困難か
さらに強化した積極的財政政策は有名無実化
2026年03月06日
最新のレポート・コラム
-
日本は国際的な人材獲得競争で勝てるのか
外国人労働者の増加継続を見込むも経済下振れと円安がリスク要因
2026年04月07日
-
2026年2月消費統計
財は弱いもののサービスが強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2026年04月07日
-
原油高・リスクオフ下での新興国の耐性は
脆弱性が最も懸念されるのは南ア。耐性が高いのはブラジル
2026年04月06日
-
トランプ大統領「米国政府と契約したければDEIをやめなさい」
大統領令を発出し、米国政府の契約先企業によるDEIへの取り組みを精査・規制する方針を明示
2026年04月06日
-
「第3次オイルショック」発生リスクへの日本の対応は十分か
2026年04月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

