欧州経済見通し 短期上振れ、中期は不透明

注目点は外需回復の持続性

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2017年02月22日

サマリー

◆欧州経済は堅調な成長を続けている。2016年10-12月期の実質GDP成長率はユーロ圏が前期比+0.4%、英国が同+0.6%と発表された。個人消費に加え、久々に輸出が牽引役になったと推測される。輸出の先行指標である鉱工業部門の景況感は2016年半ばから改善傾向にあり、特に最近3カ月は「トランプ効果」で一段と押し上げられている。


◆トランプ効果は短期的に欧州の景気上振れ要因となると予想される。一方、中期的には不透明材料が多い。まず、公約通りに減税、規制緩和、インフラ投資などを実行に移せるか、大統領と議会の関係が注目される。次にそれらの政策がすでに失業率が歴史的な低水準にある米国でインフレ高進を回避しつつ成長率を高めることができるか、米国の利上げペースを速め、成長加速が短命で終わらないかという懸念がある。加えて、トランプ大統領の保護貿易主義的な政策がどこまで遂行されるかも気がかりである。


◆ユーロ圏、英国とも原油価格上昇を主因として消費者物価上昇率が前年比+2%に迫ってきた。エネルギー価格の上昇圧力はここ数カ月がピークと見込まれるが、ECB(欧州中央銀行)、BOE(英中銀)ともより広範囲なインフレをもたらす賃金上昇率の加速が生じないかを注視している。中期的な景気見通しに不透明材料が多く、加えて今年はオランダ、フランス、ドイツの国政選挙が続き、さらに英国が3月末までにEUへの正式な離脱通告を目指している。この状況下でECB、BOEとも金融緩和強化と緩和縮小の双方の選択肢を用意しつつ、しばらくは現行の金融緩和政策を維持する可能性が高いだろう。

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