日本経済見通し:トランプ政権成立で何が起きるのか?
国境税調整導入は日本の実質GDPを▲0.4%程度下押しする見通し
2017年02月22日
サマリー
◆経済見通しを改訂:2016年10-12月期GDP一次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2016年度が前年度比+1.3%(前回:同+1.3%)、2017年度が同+1.3%(同:同+0.9%)、今回から新たに予測した2018年度が同+1.1%である。先行きの日本経済は、①輸出の持ち直し、②在庫調整の進展に加えて、③底堅い消費・設備投資に支えられた内需の回復により、バランスの取れた成長軌道へと移行する見通しである(→詳細は、熊谷亮丸他「第192回 日本経済予測」(2017年2月17日)参照)。
◆トランプ政権成立で何が起きるのか?:2017年1月に米国でトランプ政権が成立したことを受け、①保護貿易主義化、②移民政策、③米国の通貨戦略についてその影響を検証した。主な結論は以下の3点である。第一に、米国がNAFTAから脱退するだけであれば、日本経済への影響は軽微なものにとどまるが、国境税調整が導入された場合には、日本の実質GDPは▲0.4%程度下押しされる可能性がある。第二に、200万~300万人の不法移民の強制送還によって労働者が減少すれば、米国の潜在GDPは▲0.7~▲1.1%程度押し下げられるリスクがある。第三に、為替市場では短期的にはドル高が進む可能性が高いものの、中長期的にみると、インフレ懸念が後退した際には、トランプ大統領が本格的な「ドル安政策」に踏み切る可能性がある(→トランプ政権成立が日本経済に与える影響についてご関心のある方は、弊社が2016年12月に緊急出版した『日経プレミアシリーズ:トランプ政権で日本経済はこうなる』(日本経済新聞出版社)をご一読いただきたい)。
◆日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①トランプ大統領の政策、に加えて、②中国経済の下振れ、③米国の「出口戦略」に伴う新興国市場の動揺、④地政学的リスクおよび政治リスクを背景とする「リスクオフ」、⑤英国のEU離脱交渉や欧州金融機関のデレバレッジ、の5点に留意が必要だ。
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