サマリー
1月16日に発表した世界経済見通しにおいて、IMFは世界の成長見通しを2017年3.4%、2018年3.6%と前回予測(2016年10月)から据え置いた。2016年の3.1%成長をボトムとして、緩やかに回復する姿である。米国の景気刺激策を一部反映させ、同国の成長率が上方修正される一方、イタリア、ブラジル、メキシコ、インドなどが下方修正されている。もっとも、メキシコを除く各国の下方修正の要因は、米国の政権交代とはほぼ無関係であり、IMFは米国の景気刺激策の世界経済へのネットの効果をプラスと見積もっている模様である。ただしIMFも指摘しているように、米国の経済政策の先行きには多大な不確実性が存在する。例えば、最近になってトランプ氏は、ドル高への不快感を示していると伝えられるが、ドル高は同氏の景気刺激策表明の帰結であり、二兎を追うがごとくの同氏のプライオリティ(そのようなものがあるとして)の在り方を見極めるには時間を要することになりそうだ。さしあたり、日欧にはドル反落への備えが、また新興国には自国通貨の再度の下降への備えが求められよう。世界経済が勝ち組と負け組からなるゼロサムゲームではないことをトランプ氏が理解するまで、世界は様々なシナリオを想定し、自身へのインパクトのシミュレーションに勤しまざるを得ない。こうした不確実性が企業の投資意欲を損ない、米国の景気刺激策を相殺することが懸念される。
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