サマリー
◆多くの雇用関連指標が労働需給のひっ迫を示唆しているにもかかわらず、有効求人倍率は直近でも顕著に低迷している。本稿では、有効求人倍率がコロナ禍前に比べて下振れを続けている要因を分析し、その推移を評価した上で、有効求人倍率を含む職業安定業務統計の有効な活用方法について述べる。
◆有効求人倍率が2019年度比で低迷している要因は、①2020年1月の求人票変更に伴う一部企業のハローワーク離れ、②一部職業(販売・サービス)及びシニア層(55歳以上)向けの求人数の減少、③シニア層を中心とした求職者数の増加、に整理される。販売・サービスはもともとハローワークを経由した入職者が比較的少ないこともあり、民間サービスを介した採用活動が広がった可能性がある。シニア層の求職者数の増加は、ハローワーク側がシニア層向けの支援を拡充してきたことも一因とみられる。
◆職業安定業務統計は、集計対象に中小・零細企業が含まれる点や、全国のハローワークの求人・求職動向をあまねく反映している点で優れている。ただし、業務統計であるが故に業務内容やプロセスの変更によりデータが振れるほか、ハローワークを利用することが多い(少ない)企業や労働者の動向を反映しやすい(にくい)。有効求人倍率を足がかりに労働需給を分析する際には、他統計と比較しつつ、こうした特性を十分に考慮してデータを解釈することが重要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
25年度最低賃金改定の総括と今後の焦点
新政権では欧州型目標の導入など最低賃金政策の再考を
2025年10月14日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

