有効求人倍率の低迷は実態を表しているのか?

業務統計であるが故のデータの振れや集計対象の偏りに注意

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2025年07月09日

サマリー

◆多くの雇用関連指標が労働需給のひっ迫を示唆しているにもかかわらず、有効求人倍率は直近でも顕著に低迷している。本稿では、有効求人倍率がコロナ禍前に比べて下振れを続けている要因を分析し、その推移を評価した上で、有効求人倍率を含む職業安定業務統計の有効な活用方法について述べる。

◆有効求人倍率が2019年度比で低迷している要因は、①2020年1月の求人票変更に伴う一部企業のハローワーク離れ、②一部職業(販売・サービス)及びシニア層(55歳以上)向けの求人数の減少、③シニア層を中心とした求職者数の増加、に整理される。販売・サービスはもともとハローワークを経由した入職者が比較的少ないこともあり、民間サービスを介した採用活動が広がった可能性がある。シニア層の求職者数の増加は、ハローワーク側がシニア層向けの支援を拡充してきたことも一因とみられる。

◆職業安定業務統計は、集計対象に中小・零細企業が含まれる点や、全国のハローワークの求人・求職動向をあまねく反映している点で優れている。ただし、業務統計であるが故に業務内容やプロセスの変更によりデータが振れるほか、ハローワークを利用することが多い(少ない)企業や労働者の動向を反映しやすい(にくい)。有効求人倍率を足がかりに労働需給を分析する際には、他統計と比較しつつ、こうした特性を十分に考慮してデータを解釈することが重要だ。

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