サマリー
このところ、債券市場を中心に新興国への資金流入が活発化しているといわれる。実際、新興国国債のリスクプレミアムが縮小する一方で、起債が活発化している。日欧のマイナス金利など、先進諸国・地域における金融緩和が、世界的な利回りの分捕り合戦を引き起こし、それが新興国にまで波及しているということだろう。これには良い面と悪い面がある。例えば中東産油国など、資源依存度の高い国にとって、低金利資金のアベイラビリティが高まることは、傷んだ政府のバランスシートを修復する上で大きな助けになる。アルゼンチンのようなデフォルト経験国にとっても、政権交代を機とした国際金融市場への復帰を図るうえで、現在の環境はうってつけである。資金流入に伴う通貨の増価が、新興国の金融政策の自由度を高めるというメリットもあろう。もっとも2000年代の新興国ブームと異なり、今、新興国に流入しているカネの多くは、先進国から逃げ出した“Push”のカネであり、新興国が惹きつけた“Pull”のカネでは恐らくない。従って、それが成長に結び付く可能性は高くない。成長をもたらさないカネの流入が過度に及べば、新興国域内でバブルが膨張し、反動的、かつ暴力的な資金流出のリスクが高まる。結局、資金流入もほどほどが良いということになるのだが、そうはいかないのが金融市場の常である。新興国を巡るカネの動きには暫く注視が必要になりそうだ。
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