サマリー
◆米国経済の状況は、労働市場は底堅い改善が続いているものの、足下でやや改善に足踏みが見られ、4-6月期の成長率を押し上げた個人消費に関しても8月は冴えない結果となった。企業部門に関しても、これまで好調だった非製造業も含めて景況感は大きく悪化し、実態面でも鉱工業生産が前月から悪化するなど総じて振るわない。
◆しかし、現時点では景気後退に陥るほどの弱さがあるわけではなく、あくまで減速に留まっている。FRB(連邦準備制度理事会)による利上げ継続スタンスが変更される可能性は低く、年内利上げの可能性は十分に残されていると考えられる。
◆足下までの経済統計を踏まえると、7-9月期の実質GDPは比較的高めの成長が期待できる。個人消費は8月に減速が見られたものの、それでも前期比年率+3%台の成長が見込まれる。これまで停滞してきた設備投資に関しても、前期から増加に転じる公算が大きい。10-12月期以降の経済見通しに関して、労働市場と個人消費の好循環による改善が続き、内需主導の緩やかな景気拡大が続くという見方に変更はない。
◆一方で、いわゆる長期停滞に対する議論が米国内において以前にも増して高まっている。ジャクソンホールでのイエレン議長の講演では、中立金利が低下する中でも、従来通りの金融政策で十分緩和的な環境を作りだせるという楽観的な結論を示されたのに加えて、短期的な景気刺激策の有用性や、構造改革の必要性が言及された。
◆今後の財政政策運営に関して、民主・共和両党の大統領候補は、いずれも大型インフラ投資による景気浮揚、雇用の拡大をはじめ、拡張的な財政政策を主張している。しかし、CBO(議会予算局)が8月に公表した財政見通しによれば、これまで縮小傾向が続いてきた財政赤字は長期的に拡大していく見通しとなっており、具体的な財源や財政規律に対する配慮が、政策の実現性を占う上で重要な要素となる。
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