サマリー
◆英国がEU離脱(Brexit)を選択してからほぼ3カ月が経過したが、英国経済は個人消費が予想以上に強く、Brexit選択に伴う景気悪化はまだ確認されていない。BOE(英中銀)の8月の利下げを受けて銀行の貸出金利が低下しており、消費と投資を下支えする効果も期待される。とはいえ、企業による投資と雇用の手控えと、ポンド安による家計の購買力低下の顕在化はこれからと見込まれ、英国経済は減速に向かうと予想される。Brexit実現のための「行動計画」の策定を進めているメイ首相は、EUへの離脱通告は「2017年1月か2月になる」との見通しをトゥスクEU大統領に伝えたと報じられたが、それまでに英国政府として見解統一ができるのか依然として不透明である。
◆ユーロ圏経済は内需主導の緩やかな景気回復が続くと見込まれるが、景気下振れを示唆する指標も散見される。7月の小売売上高と建設生産は堅調な伸びとなった一方、輸出と製造業生産は悪化した。7月と8月の生産統計は自動車産業の夏期休暇が攪乱要因となって、年ごとに大きくぶれる傾向があるものの、Brexitという不透明要因に加えて、外需の回復の鈍さというリスクがユーロ圏経済にあることを再認識させられる。ECB(欧州中央銀行)は景気テコ入れと適度な物価上昇率の回復のためには、各国政府による取り組みも不可欠と繰り返し主張しているが、南欧諸国の労働市場改革は当初は雇用者所得を目減りさせ、デフレ要因となるため、ECBの金融緩和局面の長期化が避けられないであろう。
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