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「トランプ現象」とBrexitが自由貿易を圧殺する?

2016年08月23日

金融調査部 金融調査部長 児玉 卓

サマリー

近年の世界の成長率の停滞は、貿易数量の伸び悩みと同時進行している。IMFによれば、世界の実質成長率は2012年以降、3%台での停滞が継続しているが、世界全体の貿易数量の増加率もこの間、2000年代の5%台から3%強へと大幅に減速している。短期的なアップダウンにおいても両者の相関は高い。成長と貿易、因果関係は双方向であろうが、9月上旬に中国杭州で開催されるG20サミットでも、成長刺激の方途として、貿易取引の活性化が議論される可能性は高い。そして、そうした議論は総論において、参加国・地域から賛意を示されることとなろう。しかし現実には、貿易を突破口として世界経済が成長率を再度高めていくという絵を描くことは難しい。例えば、大統領選挙が佳境に入りつつある米国では、共和党、民主党双方の候補者がTPPへの反対を表明している。欧州でもポピュリスト政党を中心に国内産業保護、自由貿易反対の声が強まりつつある。ポピュリスト政党が政権の座に就くことはないにせよ、こうした勢力が人々への訴求力を高めていることは、現在政権を担っている政党にとっても無視できるものではない。クリントン氏の「変節」を見るまでもなく、いわゆる「エスタブリッシュメント」を巻き込み、国際的な政治環境は貿易活性化に向けた強い逆風となりそうである。むしろ、例えばBrexitに揺れるEUが域内の結束を強める表裏の戦略として、EU域外に対する保護主義に傾斜する懸念もなしとしない。世界経済停滞からの脱却に向けて、残念ながら、好材料よりも懸念材料が優勢であることに変化はないようにみえる。

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