欧州経済見通し マインドと実体経済の乖離

Brexit選択による景気悪化の顕在化はこれから

RSS

2016年08月23日

サマリー

◆英国がEU離脱(Brexit)を選択してから2カ月が経過したが、この選択が経済にどのような悪影響を及ぼすのかまだ判断がつかない。これまで発表された経済指標のうち、消費者信頼感を筆頭にマインド指標は悪化が目立つ一方、小売売上高など実体経済指標は堅調を維持している。Brexit選択に伴う景気悪化の経路は、企業が投資を手控え、雇用拡大に慎重になることと、ポンド安がインフレ要因となって家計の購買力を損なうことと想定されるが、どちらも顕在化までしばらく時間を要しよう。なお、景気への悪影響を小さくするには、Brexitの交渉がどのような日程で進められ、どう決着するかが早期に明らかになることが重要だが、英国がEUに離脱を通告する時期が2017年後半に先送りされるとの観測が浮上しているように、むしろ不透明感が増している。


◆ユーロ圏経済は4-6月期のGDP成長率が前期比+0.3%と1-3月期の同+0.6%から減速した。もっとも、これはBrexitに対する懸念のためではなく、1-3月期の成長率が一過性の要因で押し上げられたことが主因である。英国経済が減速すれば、ユーロ圏経済にとって外需減退要因だが、この影響は徐々に顕在化すると予想される。また、ここ3年のユーロ圏の景気回復の牽引役は個人消費を中心とする内需であり、これまでのところ消費者と企業の景況感に目立った悪化は見られない。ユーロ圏経済は過去3年の緩やかな景気回復ペース(平均すると前期比+0.3%程度)を来年にかけて概ね継続すると見込む。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。