サマリー
◆英国がEU離脱(Brexit)を選択してから2カ月が経過したが、この選択が経済にどのような悪影響を及ぼすのかまだ判断がつかない。これまで発表された経済指標のうち、消費者信頼感を筆頭にマインド指標は悪化が目立つ一方、小売売上高など実体経済指標は堅調を維持している。Brexit選択に伴う景気悪化の経路は、企業が投資を手控え、雇用拡大に慎重になることと、ポンド安がインフレ要因となって家計の購買力を損なうことと想定されるが、どちらも顕在化までしばらく時間を要しよう。なお、景気への悪影響を小さくするには、Brexitの交渉がどのような日程で進められ、どう決着するかが早期に明らかになることが重要だが、英国がEUに離脱を通告する時期が2017年後半に先送りされるとの観測が浮上しているように、むしろ不透明感が増している。
◆ユーロ圏経済は4-6月期のGDP成長率が前期比+0.3%と1-3月期の同+0.6%から減速した。もっとも、これはBrexitに対する懸念のためではなく、1-3月期の成長率が一過性の要因で押し上げられたことが主因である。英国経済が減速すれば、ユーロ圏経済にとって外需減退要因だが、この影響は徐々に顕在化すると予想される。また、ここ3年のユーロ圏の景気回復の牽引役は個人消費を中心とする内需であり、これまでのところ消費者と企業の景況感に目立った悪化は見られない。ユーロ圏経済は過去3年の緩やかな景気回復ペース(平均すると前期比+0.3%程度)を来年にかけて概ね継続すると見込む。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日