サマリー
◆「政治の季節」が始まり、経済政策のぶれが指摘されるようになっている。足元の景気を重視するのか、構造改革を重視するのか、で路線の対立があると言われているが、経済政策を巡って対立が激化しているのではなく、経済政策が政争の具となっているのが現実であろう。
◆2016年1月~3月の固定資産投資と金融統計は、中国政府が景気底入れに本気で取り組んでいるとの期待を高めたが、5月9日付けの人民日報が、年初からの行きすぎた金融緩和など一連の経済政策を批判する権威筋の長文インタビュー記事を掲載したあたりから潮目は変わっていく。1月~7月の固定資産投資は前年同期比8.1%増と、1月~3月の同10.7%増から減速し、単月では3月の前年同月比11.2%増から7月は同3.9%増に落ち込んだ。牽引役が不足するなか、当面、固定資産投資の減速が続くことになろう。
◆実質小売売上は昨年を下回る推移が続いている。ただ、ここ数年は急成長するネット販売が11月~12月に安売り攻勢を仕掛け、年々それが大規模化していることが、小売売上の伸び加速に寄与している。足元でもネット販売の急成長は続いており、実質可処分所得が大きく鈍化するようなことがなければ、今年も消費は年末に向けて若干の伸びの加速が期待できるだろう。
◆輸出入(米ドル建て)は前年割れが続いているが、四半期統計を見ると、輸出は2016年1月~3月、輸入は2015年1月~3月が最悪期であった可能性が高い。主要先進国の景気は緩やかながらも回復すると期待され、今後の中国の輸出は急増することはないにせよ、着実に改善していこう。
◆このように、中国経済は固定資産投資が引き続き減速するものの、比較的堅調な消費と外需が下支え役となることで、大きく崩れるリスクは限定的とみている。中国の実質GDP成長率は2015年の前年比6.9%から、2016年は同6.6%程度、2017年は同6.4%程度と緩やかな景気減速が続こう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日