米国経済見通し 年後半の加速で利上げ模索

労働市場は力強さを取り戻し、インフレ率は持ち直しへ

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2016年08月23日

  • 土屋 貴裕
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆米国経済の現状に関して、4-6月期の成長をけん引した個人消費は、7月には足踏みが見られた。しかし、労働市場は力強さを取り戻し、消費者マインドも高水準を維持していることから停滞は一時的と考えられる。企業部門に関しては、エネルギー関連を中心に鉱工業生産に持ち直しが見られているが、設備投資は依然低迷が続いている。


◆経済は緩やかな回復基調で、年後半にかけてインフレ率が持ち直す可能性が高まっている。FRB(連邦準備制度理事会)の高官から、年内の利上げに前向きな発言が相次いだ。同時に、金融政策の限界と、財政政策や構造改革が成長を促す必要性も指摘されている。


◆大統領選に向けて経済政策が徐々に明らかになっている。クリントン候補とトランプ候補で対立点、一致点があるが、トランプ候補の主張は曖昧なままで、共和党指導部の主張とのかい離が見られる。9月下旬以降の候補者討論会で政策論議が深化すれば、政策の優先順位や実現可能性がはっきりしてくる可能性がある。


◆2016年4-6月期のGDP成長率は前期比年率+1.2%と低い伸びに留まったが、年後半には成長率が加速し、米国経済は底堅い成長を続けていく見通しである。投資需要が落ち込む中でも堅調を維持している個人消費は、先行きも増加基調が続くとみられる。加えて、設備投資も徐々に増加基調に復すると考える。ただし、設備ストックを積み増す必要性は高くなく、生産を下押ししてきた輸出は引き続き停滞が続く可能性が高いことから、設備投資の回復は緩慢なものとなろう。

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