サマリー
◆米国経済の現状に関して、4-6月期の成長をけん引した個人消費は、7月には足踏みが見られた。しかし、労働市場は力強さを取り戻し、消費者マインドも高水準を維持していることから停滞は一時的と考えられる。企業部門に関しては、エネルギー関連を中心に鉱工業生産に持ち直しが見られているが、設備投資は依然低迷が続いている。
◆経済は緩やかな回復基調で、年後半にかけてインフレ率が持ち直す可能性が高まっている。FRB(連邦準備制度理事会)の高官から、年内の利上げに前向きな発言が相次いだ。同時に、金融政策の限界と、財政政策や構造改革が成長を促す必要性も指摘されている。
◆大統領選に向けて経済政策が徐々に明らかになっている。クリントン候補とトランプ候補で対立点、一致点があるが、トランプ候補の主張は曖昧なままで、共和党指導部の主張とのかい離が見られる。9月下旬以降の候補者討論会で政策論議が深化すれば、政策の優先順位や実現可能性がはっきりしてくる可能性がある。
◆2016年4-6月期のGDP成長率は前期比年率+1.2%と低い伸びに留まったが、年後半には成長率が加速し、米国経済は底堅い成長を続けていく見通しである。投資需要が落ち込む中でも堅調を維持している個人消費は、先行きも増加基調が続くとみられる。加えて、設備投資も徐々に増加基調に復すると考える。ただし、設備ストックを積み増す必要性は高くなく、生産を下押ししてきた輸出は引き続き停滞が続く可能性が高いことから、設備投資の回復は緩慢なものとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日