世界経済にとってBrexitの何が問題なのか
2016年07月22日
サマリー
Brexit騒ぎの金融市場へのインパクトはひとまず終息した。英国がEUと、いつまでに、どのような関係を新たに結ぶのか、そしてそれが英国とEUの経済にどのような帰結をもたらすのか、分からないことばかりである。金融市場はこうした状況を嫌うのが常だが、Brexitに関しては最終決着までの時間軸が長過ぎる。EU離脱ドミノなどの最悪ケースもあり得ないではないが、どのようなシナリオであれ、現段階では市場も織り込みようがない。英国自身はリセッション入りする可能性が高まっているが、同国の経済規模が限定的であることもあり、世界経済、グローバル金融市場にとってのBrexit騒ぎは、少なくともいったん終わったとみていい。といって、世界経済に明るさが見えてきたわけでもない。米国は雇用が持ち直し、景気失速懸念は薄らいだが、既に7年に及ぶ景気拡大を経て、更に世界経済のけん引力を強めるとは期待しがたい。中国の実質成長率は下げ止まったが、伝統的な公共投資で何とか支えている状況であり、加速は見込めない。ロシアやブラジル等の資源依存国の景気悪化に歯止めがかかりつつあることは朗報だが、資源ブームの再来が展望されるわけでは無論ない。こうした状況が続く中にあって、前向きな政策対話を困難にした点では、やはりBrexitは痛手と見るべきか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2016年07月21日
欧州経済見通し Brexit選択の衝撃
長引く「視界不良」
-
2016年07月21日
中国:一段の減速は回避だが...
2016年4月~6月の実質GDP成長率は前年同期比6.7%と横這い
-
2016年07月21日
日本経済見通し:マイナス金利導入による経済の好循環を阻害する要因は?
日本経済には成長戦略の着実な実施、社会保障制度の再構築が重要
-
2016年07月21日
米国経済見通し Brexitの影響は限定的
内需を腰折れさせるほどのインパクトはないが様子見は必要
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月20日
日本経済見通し:2021年1月
1-3月期は小幅な景気悪化を見込むも「二番底」リスクを排除できず
-
2021年01月20日
日本経済中期予測(2021年1月)解説資料
~コロナ禍で変容する世界経済と加速するグリーン化の取組~
-
2021年01月20日
日本経済中期予測(2021年1月)
コロナ禍で変容する世界経済と加速するグリーン化の取組
-
2021年01月20日
中国:V字回復下の中国経済の注目点
感染第2波は回避へ。注目される接触型消費の完全復活の成否
-
2021年01月20日
新たな科学技術・イノベーション政策への期待
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く