欧州経済見通し Brexit選択の衝撃

長引く「視界不良」

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2016年07月21日

サマリー

◆6月23日の国民投票で英国はEUからの離脱(Brexit)を選択した。キャメロン首相の後任となったメイ首相の下で、英国は今後EUとの離脱交渉に臨むことになるが、この交渉がいつ始まり、いつまで続き、どのような結末を迎えるのかを判断する手がかりがほとんどないのが現状である。EUからの離脱協定が発効するまで、英国とEUの法的な関係はこれまでと変わらないのだが、今後数年単位で継続する可能性が高い「視界不良」の状態は英国経済にとってマイナス要因である。


◆英国経済はこの春ごろから景況感の悪化や建設投資の落ち込みが見られたが、Brexitが選択されたことで企業投資や雇用の手控えに加え、これまで経済成長を牽引してきた個人消費が減速に転じることが懸念される。今後の英国の成長率はマイナスに転じると見込まれる。英中銀(BOE)は7月には追加緩和を見送ったが、インフレーション・レポートを公表する8月には成長率予想を下方修正すると共に、追加緩和策を発表することになろう。


◆ユーロ圏経済に対するBrexit選択の影響も徐々に顕在化してくると予想される。英国の景気減速はユーロ圏の輸出減につながるが、これがユーロ圏企業の投資や雇用の抑制要因となるか注目される。他方でBrexitをにらんで、ロンドンのシティが担っている欧州の金融仲介機能を自国に呼び込もうとフランス、ドイツ、アイルランドなどがさっそく売り込みをかけているが、ロンドンに拠点を有する金融機関等が他国への全面的な移転を具体化させるのは、英国とEUの新しい関係が見通せるようになってからの話となろう。

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