サマリー
FRB(連邦準備制度理事会)は、2015年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でついに利上げに踏み切った。重要な政策イベントとは言え、米国の利上げを巡ってこれほど論争が繰り広げられたことは過去になかった。労働生産性が低迷し、インフレ率が非常に低い中での利上げが適切であったかどうかは、歴史の判断に委ねられることになる。世界経済への影響はFRBの利上げペース次第だが、南アフリカのように通貨安から生じるインフレ圧力を軽減するため、FRBに先行して利上げを行った国がある。今後、新興国ではFRBの利上げに追随せずに資本流出と通貨安を受け入れ、景気浮揚のために利下げを行う国と、南アフリカのように景気悪化のリスクを承知しつつ、利上げによって通貨防衛とインフレ抑制を図る国とに分かれるだろう。FRBの金融引き締めを見越して新興国からすでに十分な資本流出が発生したとすれば、今回の利上げの影響は小さい。次回以降の利上げが新興国から資本流出を再加速させるトリガーとなるかどうかは、現在は低位で推移する米国のインフレと賃金動向次第ということになる。
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