サマリー
FRB(連邦準備制度理事会)は、2015年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でついに利上げに踏み切った。重要な政策イベントとは言え、米国の利上げを巡ってこれほど論争が繰り広げられたことは過去になかった。労働生産性が低迷し、インフレ率が非常に低い中での利上げが適切であったかどうかは、歴史の判断に委ねられることになる。世界経済への影響はFRBの利上げペース次第だが、南アフリカのように通貨安から生じるインフレ圧力を軽減するため、FRBに先行して利上げを行った国がある。今後、新興国ではFRBの利上げに追随せずに資本流出と通貨安を受け入れ、景気浮揚のために利下げを行う国と、南アフリカのように景気悪化のリスクを承知しつつ、利上げによって通貨防衛とインフレ抑制を図る国とに分かれるだろう。FRBの金融引き締めを見越して新興国からすでに十分な資本流出が発生したとすれば、今回の利上げの影響は小さい。次回以降の利上げが新興国から資本流出を再加速させるトリガーとなるかどうかは、現在は低位で推移する米国のインフレと賃金動向次第ということになる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:波乱の1年の終わりに
中国悲観論が台頭するのは何故か?
2015年12月18日
-
2016年の欧州経済見通し
内需が牽引する景気回復が継続するものの、低インフレは脱せず
2015年12月18日
-
2016年の米国経済見通し
好循環が働くことで経済が下振れするリスクは小さい
2015年12月18日
-
2016年の日本経済見通し
景気は緩やかな回復軌道を辿る見通しだが、5つのリスクに要注意
2015年12月18日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日