サマリー
◆中国の景気が数字以上に悪く感じられるのは何故であろうか?大きな要因の一つは株価急騰・暴落に対する政策対応の拙さ、さらには、人民元の対米ドル中間レートの算出方法の変更にまつわる当局の説明不足やその後の人民元買い支えに伴う外貨準備の「浪費」などが、中国経済もしくは政府の政策遂行能力への様々な思惑や疑心暗鬼を生み、中国悲観論が台頭したことではないかと考えている。
◆今後、中国の政策対応が早急に洗練されていくとは考え難く、折に触れて「中国ショック」が特にマーケットの波乱要因になるリスクは残り続けよう。しかし、同時にそれが単なる思惑や疑心暗鬼ではなく、本当に中国経済の変調(失速)を意味しているのかを冷静に吟味する必要性も高まっているのではないか。住宅市場テコ入れや地方政府関連債務の地方債への置き換え、乗用車販売刺激策など、中国政府が繰り出した政策は効いている。少なくともマクロ経済に対する中国政府のコントロール能力は失われていない。
◆2015年12月14日に開催された中国共産党中央政治局会議は、2016年の経済運営を議論し、①イノベーション駆動戦略の深化、②企業の優勝劣敗の積極的で適切な推進、③企業のコスト低減の支援、④不動産過剰在庫の解消、⑤有効供給の拡大、などの重要性を指摘した。
◆2016年の経済運営で特に注目されるのは、④の不動産過剰在庫の解消であろう。政治局会議では、農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の市民化など「新しい市民」のニーズを満たすことを出発点とする住宅制度改革を推進するとしている。これまで住宅購入層として蚊帳の外に置かれていた農民工が住宅購入支援策の対象となることは、実需増加の面でも注目されよう。住宅の在庫調整が地方都市でも進展すれば、大都市で先行するであろう不動産開発投資の回復に力強さが増していくことが期待される。不動産開発投資は、鉄鋼、セメントなど裾野産業も広く、その反転は景気持ち直しをサポートしよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米中貿易戦争、勝者は中国
伝家の宝刀・レアアース、輸出先の分散化、迂回輸出
2026年10月02日
-
中国政府が景気テコ入れ策を発表
再貸出限度額の増額、住宅ローンへの1%利子補給
2026年10月01日
-
中国経済見通し:不動産不況、脱却はまだ先
住宅完成後販売への移行は◎。一段と悪化する内需と堅調な外需
2026年09月24日
最新のレポート・コラム
-
一括取得型自己株式取得(ASR)入門
ASRに関する基本的な事項をQ&A形式で解説
2026年10月16日
-
「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」における金融経済教育に関する記述
金融経済教育関連に限ると、大幅な拡充は行われない方向性か
2026年10月16日
-
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
-
なぜ企業は同じ情報を何度も提出しなければならないのか
公的統計のデジタル化を問う①-負担軽減の「効果」
2026年10月16日
-
成長投資の先にあるもの ~AI時代に問われる「組織能力」~
2026年10月16日
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

