中国:波乱の1年の終わりに

中国悲観論が台頭するのは何故か?

RSS

2015年12月18日

サマリー

◆中国の景気が数字以上に悪く感じられるのは何故であろうか?大きな要因の一つは株価急騰・暴落に対する政策対応の拙さ、さらには、人民元の対米ドル中間レートの算出方法の変更にまつわる当局の説明不足やその後の人民元買い支えに伴う外貨準備の「浪費」などが、中国経済もしくは政府の政策遂行能力への様々な思惑や疑心暗鬼を生み、中国悲観論が台頭したことではないかと考えている。


◆今後、中国の政策対応が早急に洗練されていくとは考え難く、折に触れて「中国ショック」が特にマーケットの波乱要因になるリスクは残り続けよう。しかし、同時にそれが単なる思惑や疑心暗鬼ではなく、本当に中国経済の変調(失速)を意味しているのかを冷静に吟味する必要性も高まっているのではないか。住宅市場テコ入れや地方政府関連債務の地方債への置き換え、乗用車販売刺激策など、中国政府が繰り出した政策は効いている。少なくともマクロ経済に対する中国政府のコントロール能力は失われていない。


◆2015年12月14日に開催された中国共産党中央政治局会議は、2016年の経済運営を議論し、①イノベーション駆動戦略の深化、②企業の優勝劣敗の積極的で適切な推進、③企業のコスト低減の支援、④不動産過剰在庫の解消、⑤有効供給の拡大、などの重要性を指摘した。


◆2016年の経済運営で特に注目されるのは、④の不動産過剰在庫の解消であろう。政治局会議では、農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の市民化など「新しい市民」のニーズを満たすことを出発点とする住宅制度改革を推進するとしている。これまで住宅購入層として蚊帳の外に置かれていた農民工が住宅購入支援策の対象となることは、実需増加の面でも注目されよう。住宅の在庫調整が地方都市でも進展すれば、大都市で先行するであろう不動産開発投資の回復に力強さが増していくことが期待される。不動産開発投資は、鉄鋼、セメントなど裾野産業も広く、その反転は景気持ち直しをサポートしよう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。